嬉しいサプライズだ。FW林大地のことである。
南アフリカ戦、メキシコ戦に連勝し、U-24日本代表は2試合を終えてグループAの首位に立っている。久保建英、堂安律ら主力が順調に得点を重ねているなか、一際印象深いプレーを見せているのが最前線で奮闘するFW林だ。
前線では労を厭わず攻守に奔走。守備時には相手へのチェックを怠らず、攻撃時には裏へ走り込み相手の守備を誘い出す。さらには潰れ役として、味方の長所を徹底的に引き出している。だが、本来は所属するJリーグのサガン鳥栖で「ビースト(野獣)」のあだ名で親しまれているように、貪欲にゴールを狙うストライカーである。
そもそも、当初、五輪代表へはバックアップメンバーとして招集されていた林。U-24メンバー入りを初めて果たしたのも今年の3月と最近だ。いわば「遅れてきた男」なのである。
だが、最終的に登録枠に関する規則が変更となり、正規メンバーとしてチームに帯同することになった。そして、いざ本大会が始まってみれば2試合連続で先発の座を射止めている。当初は上田綺世の負傷もあっての出場機会増だったが、直前の親善試合、そして本大会2試合の活躍を見せつけられると、今や林不在の日本代表も考えにくい。それ程貢献度が高いのだ。
森保一監督にとっても、林が見せている姿は嬉しい誤算なはず。当初は守備の背後を突くアタッカーとして想定していた林が、ポストプレーヤーとしても機能し、二列目の選手の創造性を引き出しているのだから。林は同じく前線でポジションを争う前田大然、上田綺世とも違う特徴を見せ、先発の座を掴み取った。
一発勝負の大会では、大会中にチームが瞬く間に成長し勢いづいていくことがあるが、ここに来て凄まじい成長を見せている林がそのブースト剤となる可能性は十分にある。仲間のために全力を振り絞る野獣が、金メダルを狙うチームを高みへと押し上げる。