2年連続4冠王のオリックス山本由伸はドラフト4位の入団だった。今や下位指名(4位以下と育成)が主力になっている。「無名がお宝」なのである。
日本シリーズにずらり
2022年の日本シリーズは前年に続くヤクルト-オリックス戦。その第1戦の先発メンバーに目を見張った。両軍で計7選手がドラフト指名4位以下だった(入団年、指名順位)。
ヤクルト=1番中堅・塩見泰隆(18年4位)2番左翼・山崎晃太朗(16年5位)8番遊撃・長岡秀樹(20年5位)
オリックス=3番一塁・中川圭太(19年7位)5番右翼・杉本裕太郎(16年10位)6番二塁・西野真弘(15年7位)9番投手・山本由伸(17年4位)
ヤクルトに外国人2人がいるから16先発選手の内、4割が下位指名だった。ベンチ入りした両軍を見ると、ヤクルトには内野手の宮本丈(18年6位)投手の高梨裕稔(日本ハム14年4位)と今野龍太(楽天14年9位)らがいる。オリックスにはリリーフ投手の山崎颯一郎(17年6位)阿部翔太(21年6位)宇田川優希(21年育成3位)ら。
阪神勢がタイトルホルダーに
セ・リーグで下位指名の活躍が目立つのが22年の特徴である。とりわけ阪神投手が目に付く。エースの青柳晃洋(16年5位)は防御率1位(2.05)と最多勝(13勝)を獲得した。中継ぎの湯浅京己(19年6位)は最多ホールド(43)である。岩崎優(14年6位)が28セーブ(6位)を、浜地真澄(17年4位)は21ホールド(10位)を挙げた。捕手の梅野隆太郎(14年4位)も下位指名だった。
パ・リーグは、投手では山本由が防御率(1.68)最多勝(15勝)奪三振(205個)勝率(.750)を独占した。この4冠は2年連続で“山本時代”を作った。西武の平良海馬(18年4位)はホールド(34)で1位となった。セーブ25で4位のロッテ益田直也(12年4位)ホールド31で2位の西武の水上由伸(21年育成5位)も下位指名だった。
セ打率10傑は半分が下位指名選手だった。2位の中日・大島洋平外野手(10年9位)続く3、4位のDeNAコンビの佐野恵太外野手(17年9位)宮崎敏郎三塁手(13年6位)はともに首位打者の実績を持っている。7位の中日・岡林勇希(20年5位)は佐野とリーグ最多安打161本をマークした。9位には広島・坂倉将吾捕手(17年4位)が入った。さらに付け加えると、11位の阪神・中野拓夢(21年6位)も。12位には塩見がいる。
パ・リーグは打率10傑に中川圭が5位(.283)に入った。ロッテの山口航輝(19年4位)16本塁打で6位となった。
育成の星、ソフトバンクのトリオ
育成指名選手の活躍も目立つ。その象徴がソフトバンクのトリオ、11年同期入団のエース千賀滉大(4位)内野手の牧原大成(5位)捕手の甲斐拓也(6位)である。内野手の周東佑京(18年育成2位)もそう。ソフトバンクにはこのほか、三森大貴(17年4位)柳町達(20年5位)のドラフト指名選手が売り出し中である。ベテランの中継ぎ嘉弥真新也(12年5位)もその一人。
その他の球団を見ると、広島に投手の中崎翔太(11年6位)外野手の西川龍馬(16年5位)がいる。巨人には12勝を挙げたエースの戸郷翔征(19年6位)内野手の増田大輝(16年育成1位)。楽天は投手の滝中瞭太(20年6位)西武には2000安打の栗山巧(02年4位)与座海人(18年5位)内野手の呉念庭(16年7位)大滝愛斗(16年4位)ら。日本ハムのエース上沢直之(12年6位)。
お宝はスカウトの眼力
22年10月のドラフト会議では5人指名が5球団、6人が5球団、7人が2球団で計69人。競合したのは、巨人と阪神が指名して巨人が交渉権を得た高松商の浅野翔吾外野手と、ロッテと楽天の指名で楽天が交渉権を取った立大の荘司康誠投手の2選手でともに2球団まで。育成の計57人は本指名と12人少ないだけで、それも盛り上がりに乏しく「低調」といわれた一因だった。
通算1065盗塁の福本豊(7位指名)や、首位打者7度のイチロー(4位指名)のような選手が出てくるかもしれないのが下位指名。甲子園や神宮で活躍した著名選手だけでなく、下位指名や育成指名の選手が主力になるのはスカウトの眼力にかかっている。指名中で契約金の額が決めるやり方は、現在のように「下位、育成にお宝」の時代なのだから再考の時期かも知れない。