10月9日(日本時間10日)、WBA世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(英国)が、デオンテイ・ワイルダー(米国)との3度目の対決を制した。満を持してのKO決着で、ヘビー級史上初となる4団体統一の"絶対王者"に近づいたが、まずはWBC暫定王者との統一戦が先決となりそうだ。
米ネバダ州ラスベガス、T-モバイル・アリーナで3度目の決戦となったフューリーとワイルダー。
3ラウンドでフューリーが最初のダウンを奪えば、4ラウンドにはワイルダーが逆にフューリーを右ストレートでダウンさせ、すぐあとにも2度目のダウンを奪うなど序盤で大きく動いた。乱打戦を過ぎると、フューリーは密着戦にシフト。ビッグショットの打ち合いに発展せずとも、フューリーは体格を活かしたプレスを仕掛けてタフに攻めた。
10ラウンドで再びワイルダーからダウンを奪う一方、反撃も受けたが、11ラウンドで勝負に出ると、ロープに押し込みながらの連打。最後は右の強烈なフックでトドメを刺した。1戦目のドロー、2戦目の7回KO勝ち(ワイルダー陣営のタオル投入)、そして3度目の戦いでダウンの奪い合いを経た見応えのある死闘でもって決着した。
試合後、フューリーはワイルダーに握手を求めたが、茫然自失のワイルダーはそれを拒否。「オレはスポーツマンとして彼のところに行き、敬意を示したが、彼はそれを応えようとしなかった。そうだとしてもオレは彼のために祈っているよ」と少し残念そうに述べている。それでも英国国営メディア『BBC』の解説員スティーブ・バンスはワイルダーの戦いぶりを称賛するなど、その奮闘ぶりを評価する声も多かった。
第2戦で不本意なタオル投入をした"戦犯"コーチを解任し、新体制で挑んだワイルダーは望んだ通り、死力を尽くしてフューリーに食らいついたのは確かだ。ただ、10月22日には36歳になるワイルダーにとってはこの死闘がキャリアの分岐点になる可能性があり、今後最前線に復帰するか不透明だ。
文字通りフューリーはワイルダーとの戦いに完全決着をつけた。いよいよヘビー級史上初の4団体統一王者を目指す本道へと進むことになる。
フューリーにワイルダーとの第3戦命令がくだらなければ、今夏、アンソニー・ジョシュア(英国)との英国人頂上対決による4団体統一戦が行われたハズだったが、現実ではジョシュアが9月にオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に敗れ、WBAスーパー・IBF・WBO同級統一王座が移動したばかりだ。前王者ジョシュアは正式に再戦権を行使し、2022年2月から3月に実施の見込み。ダイレクトリマッチの条件下でウシクも他の試合は行えない。フューリーが両者の勝者と対峙するのは、早くても5月か6月以降になるだろう。
WBC同級暫定王者ディリアン・ホワイト(英国)とのWBCタイトル統一戦の可能性も残るものの、ホワイト自身が10月30日のオットー・ワーリン(スウェーデン)戦を勝ち抜く必要がある。フューリーの英国でのプロモーター、フランク・ウォーレン氏は英国対決を売りにすべく、ホワイトが暫定王座を守ることを望んでいるようだ。
フューリー自身は次戦について「今夜の祝勝会パーティーと休暇のあとで考えるわ」と話し、明言は避けている。