ウシク vs ジョシュア第2戦特集:アンソニー・ジョシュアは、世界ヘビー級王座に3度輝いたアリ、ホリフィールド、ルイスら、かつての名ボクサーたちと肩を並べることができるのか

2022-08-19
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アンソニー・ジョシュア(英国)はこの週末(日本時間8月21日午前7:15頃)にオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)とのダイレクトリマッチに挑む。それはまさに歴史的な大舞台である。ジョシュアが目指す先駆者たちについて、ドム・ファレル(Dom Farrell)記者が紹介する。

ジョシュアが挑むボクシング界でも困難な偉業

32歳のジョシュアは昨年9月、ロンドンで前クルーザー級世界主要4団体統一の比類なき王者ウシクにフルマークの判定負けを喫して以来、初めてのリングになる。この試合に勝利したウシクはWBAスーパー、IBF、そしてWBOの主要3団体世界ヘビー級タイトルをジョシュアから奪い取った。

敗戦後、ジョシュアは新しいトレーナーとして、名伯楽として知られるロバート・ガルシアをチームに迎え入れた。新たな知識と戦略を身につけることで、これまでに18人のプロボクサーたちをことごとく退けてきたウシクの牙城を破ろうとしている。

【動画プレビュー】オレクサンドル・ウシク vs アンソニー・ジョシュアの再戦の行方を数字から紐解く

もしジョシュアがこれに成功すれば、ボクシング史上で数少ない伝説のボクサーたちの仲間入りを果たすことになる。ジョシュアはすでに、一度敗れたアンディ・ルイス・ジュニア(米国)とのダイレクトリマッチでリベンジを果たしている。今回ウシクに勝てば、世界ヘビー級チャンピオンに2度目のカムバックとなり、計3度目の世界王者になるのだ。

この偉業(3度の世界ヘビー級王座獲得)を達成したボクサーは本当にわずかだ。以下のリストには歴代最高峰のヘビー級チャンピオンたちも含まれる。なお、ここで扱う「世界ヘビー級王座」は、WBA、WBC、IBF、WBOの世界主要4団体管轄のタイトルを指す。

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主要4団体世界ヘビー級チャンピオンに3度戴冠したボクサーたち

モハメド・アリ(米国)

アリこそは「ザ・グレーティスト(最も偉大な男)」の称号に相応しいボクサーだった。そのキャリアで最初の2回の戴冠はどちらも大番狂わせによるものだった。1964年に絶対王者と思われていたソニー・リストン(米国)を撃破した試合もそうであったし、10年後にザイール(現コンゴ)・キンシャサでジョージ・フォアマン(米国)を破った「ロープ・ア・ドープ」(やられた振りをして長期戦で相手を疲れさせる)戦略はもっと有名だ。その前にはジョー・フレイザー(米国)を破った「スリラー・イン・マニラ」もあった。その後、アリの凋落は始まった。

アリは1978年にラスベガスでレオン・スピンクス(米国)と戦い、15ラウンド判定負けを喫した。スピンクスは1976年モントリオール五輪のライトヘビー級金メダリストではあったが、当時のプロでのキャリアはルーキーと呼べるものでしかなかった。

7か月後、アリは再び自らを奮い立たせ、ルイジアナ州ニューオーリンズ・スーパードームで行われた再戦でフルマークの判定勝ちを収めた。この勝利によって、アリはヘビー級ボクシングの歴史で初めて3度の世界タイトル獲得を果たしたチャンピオンとなった。これがアリの最後の戦いとならなかったことはボクシング史において痛恨の極みである。

マイケル・モーラー(米国)

モーラーの業績には最大の敬意を表したとしても、このリストに挙げられるほかの歴史的な名ボクサーたちの列に入れることは無理があるかもしれない。モーラーは1994年に落ち目にあったジョージ・フォアマンにTKO負けを喫したことで最も知られているが、そのときのフォアマンは45歳だったからだ。それでも、1992年にバート・クーパー(米国)を破ってWBOベルトを獲得した試合はボクシングファンのなかでは名勝負として名高い。

この試合では両者とも第1ラウンドでダウンを喫し、試合開始早々から大きなダメージを負った。第3ラウンドでクーパーは2度目のダウンを奪ったものの、第5ラウンドにはモーラーがTKO勝ちを収めた。モーラーはその当時はメジャーとは言えなかったWBOのベルトに固執することなく、すぐにタイトルを返上した。しかし、その2年後、イベンダー・ホリフィールド(米国)に判定勝ちし、WBAとIBFの世界ヘビー級タイトルを獲得したことは特筆されるべき快挙だ。

モーラーはその後すぐにフォアマンに敗れたが、1996年6月にはアクセル・シュルツ(ドイツ)を僅差の判定で破り、IBF世界ヘビー級ベルトを取り戻した。同タイトルは2度防衛しており、まずそれまで無敗だったフランソワ・ボタ(南アフリカ)を破り、続いてボーン・ビーン(米国)の挑戦を退けた。しかし、ホリフィールドとの再戦では5回のダウンを奪われる惨敗を喫した。

イベンダー・ホリフィールド(米国)

ホリフィールドがモーラーに雪辱を果たした戦いは、3回目の王座獲得を実現した試合であり、マイク・タイソン(米国)に耳を噛まれた問題の一戦後、最初の試合でもあった。現代のウシクと同じように、ホリフィールドも元々はクルーザー級のチャンピオンだった。かつてのレジェンドは今週末、そのウシクとジョシュアの一戦が行われるサウジアラビア・ジェッダにも現れる予定だ。

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ホリフィールドはヘビー級ボクシング史上唯一、4度の(主要4団体)世界王座戴冠を果たしたチャンピオンである。1999年にレノックス・ルイス(英国)との統一王座戦で敗れて失ったベルトのうちのひとつ、空位になっていたWBA王座を2000年8月にジョン・ルイス(米国)と争い、その試合に勝利して取り返した。

ホリフィールドが初めてメジャー世界タイトルを戴冠した試合の相手は、タイソンを世紀の番狂わせで破ったジェームス・“バスター”・ダグラス(米国)だった。ダグラスをマットに沈めたホリフィールドは、WBA、WBC、IBFの統一世界ヘビー級王座を獲得した。リディック・ボウ(米国)との3連戦の最初の試合に判定負けし、これらのベルトを失った。ボウとの再戦では判定勝ちし、王座を奪回したが、その後、今度はモーラーとの初戦に敗れて、またも王座から陥落した。

ホリフィールドは以降も通算5度目の世界チャンピオンへの返り咲きを目指したが、それは叶わなかった。ジョン・ルイスとの連戦では泥仕合の末に敗れた。さらに、2002年12月、クリス・バード(米国)にフルマークの判定負けを喫して、空位だったIBFタイトルを獲得できず、2007年のWBO、2008年のWBAタイトル挑戦も失敗に終わった。

レノックス・ルイス(英国)

ルイスがホリフィールド戦で見せたパフォーマンスは間違いなくキャリア最高のものであったが、そのときすでにWBCのベルトを保持していた。1997年、一度は敗れたオリバー・マッコール(米国)との2戦目でリベンジに成功した結果として、2度目のWBC王者となっていたからだ。その2年半前にウェンブリーアリーナで対戦したときは、ルイスはマッコールにKO負けを喫していた。

ルイスの最初のWBC王座獲得は1992年のことで、同年10月の挑戦者決定戦でドノバン・ラドック(カナダ)を破ったものの、当時の正規王者ボウがベルトを返上して対戦を拒否したため、ルイスがチャンピオンとして認定された経緯がある。

2001年に南アフリカで行われたハシーム・ラクマン(米国)との戦いでは衝撃的なKO負けを喫したが、ダイレクトリマッチではKO勝ちし、3回目のチャンピオン返り咲きを果たした。その後、タイソンにも圧倒的に勝利したが、ビタリ・クリチコ(ウクライナ)との戦いを最後に引退した。巨額の再戦オファーがあったとされるが本人は拒否したようだ。

関連記事:ウシク vs ジョシュア第2戦特集:モハメド・アリ、マイク・タイソン、レノックス・ルイス、ヘビー級ボクシングにおけるダイレクトリマッチの歴史的8試合

ビタリ・クリチコ(ウクライナ)

クリチコ兄弟の兄はこのリストにいるほかのチャンピオンたちとはやや異なった存在かもしれない。あまりドラマティックな復活劇を持っていないのだ。1999年に行われた3度目のWBOタイトル防衛戦ではクリス・バード(米国)を明らかに圧倒していたが、肩の負傷を理由に棄権負けした。そのすぐ後、バードはビタリの弟ウラジミール・クリチコに2連敗している。

クリチコの次の相手はレノックス・ルイスだった。2003年、ロサンゼルスでの1戦で6回TKO負けを喫したが、その後は13連勝している。そのなかには弟ウラジミールを2回KOで下したばかりのコーリー・サンダース(南アフリカ)を相手にしたKO勝ちも含まれる。この試合でクリチコは空位になっていたWBC王座を獲得し、約7か月後、ダニー・ウィリアムズ(英国)を倒して、初防衛に成功している。

翌年の2005年にはハシーム・ラクマン(米国)との防衛戦が予定されていたが、クリチコはその練習中に右膝前十字靭帯を断裂する大怪我を負ってしまった。クリチコは(1度目の)引退を表明したが、WBCから「名誉チャンピオン」と認定された。そうした経緯から、2008年10月には4年振りの復帰戦でいきなりWBC王座を保持していたサミュエル・ピーター(ナイジェリア)への挑戦権を得て勝利した。

事実上の引退状態にあった2014年、2006年以来挑戦を続けていた母国ウクライナ・キエフの市長選に初当選。今年2月のロシアによる軍事侵攻に対して市長として徹底抗戦を宣言し、その存在が世界的にクローズアップされた。

原文: Oleksandr Usyk vs. Anthony Joshua 2: Past boxers to be crowned three-time heavyweight champions as AJ chases history
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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