日本時間10月1日、スーパーウェルター級4団体統一王者ジャーメル・チャーロは、スーパーミドル級4団体統一王者『カネロ』サウル・アルバレスに挑む。2階級上のPFPキングへの挑戦は大方の予想で不利とされるなか、チャーロ自身はこの対決が「最適なタイミング」と位置づけた。
カネロが抱える難題とチャーロにとって今がベストである理由を、本誌格闘技部門エキスパートのダニエル・ヤノフスキーが解説する。
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低迷払拭狙うカネロと業界頂点狙うチャーロの4団体統一王者対決
カネロ・アルバレスは13歳でボクシングを始めた。赤毛の少年は話題のルーキーからボクシング界きってのスターへと成長していった。メキシコ・ハリスコ州のグアダラハラで生まれたカネロは、これまでに4つの階級で世界王者となり、現在はスーパーミドル級の4団体統一王者に君臨している。倒した有名ボクサーには、シェーン・モズリー、ミゲール・コット、アミール・カーン、そしてゲンナジー・ゴロフキンがいる。何人かの対戦相手はカネロより年上か同じレベルだった。
幾多の激戦を経てきたカネロは33歳になった。一時はパウンド・フォー・パウンドを極めたメキシコの英雄も、もはや老いたベテランの域に入ったと見るべきだろうか。9月30日(日本時間10月1日)のジャーメル・チャーロ戦では、年齢からの衰えを指摘する声を見返すことができるだろうか。
「私は自分がナンバー1であると信じています。キャリア全部を通してです。自分を信じなくてはいけません。頂上にいるのはたったひとりのファイターではありません。そこには何人かがいます。私は今でも若く、活力に溢れていると感じています。引退を考えたことはありません。これまで通り、練習して、そして戦うだけです。私は今が全盛期だと感じています」と、カネロはチャーロ戦に向けた公開練習の際に語った。
この試合はラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われ、米国内では『Showtime』のPPVで放送され、日本ではWOWOWおよびWOWOWオンデマンドで生放送・ライブ配信される。T-モバイル・アリーナは、カネロにとっては数々のビッグマッチの舞台となった馴染みのある会場だ。チャーロはこの会場でメインを張るのは初めてのことになる。
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『Sports Interaction』によると、カネロが「-388」で有利、スーパーウェルター級4団体統一王者のチャーロが「+288」で不利とされている。チャーロはカネロと同じく33歳であり、下馬評の低さにかかわらず、自分が優位であることに自信を持っている。
『Iron Man』(鉄人)の異名で呼ばれるチャーロは、左手を手術したことでしばらくリングから遠ざかっているが、そのことでかえってカネロより長い準備期間を得ることができた。カネロも手の手術を経たが、2020年からすでに7戦している。
「これはボクシング界最大の試合になる。いつもの通り、リング上ですべてを出し切るつもりだ。俺がこれまでやってきたことのすべてはこの試合を実現させるためにあった。カネロは偉大なファイターだ。しかしなぜ俺がライオンと呼ばれるかを知ることになる。この試合が終わったときに、世界中の人々が、俺こそがボクシング界最強のファイターであると認めることになる」と、チャーロは言った。
チャーロは2階級上のカネロと対戦することになるが、体重を増やすことを心配はしていない。兄でWBC世界ミドル級王者のジャーモールを始めとした大きな相手とスパーリングを重ねてきたからだ。今、カネロと戦うには「最適のタイミング」だと信じている。
チャーロに有利な材料はあるだろうか。それとも、カネロの強い意志はチャーロを打ち砕くだろうか。
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「ベストタイミング」のカネロ戦を制し、クロフォード戦に辿りつけるか
前述のコメントに反して、カネロは引退について触れたことがある。ラジオショー『The Breakfast Club』に出演した際、36歳か37歳で引退するつもりだと話した。5月にジョン・ライダーと対戦する前も、もし負けたら引退すると言った。幸い、この試合は3-0判定でカネロが勝利したわけだが。
ここ数年間、カネロはボクシング界きっての高額ファイトを繰り広げてきた。チャーロ戦のあとも、さらなる大金が稼げる一方で厳しい戦いがまだまだ待ち構えている。WBC世界スーパーミドル級暫定王者デビッド・ベナビデス、そしてWBA世界ライトヘビー級王者ディミトリー・ビボルとの対戦があるかもしれない。
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しかし、カネロにはビボル戦以降のパッとしない試合内容から低迷説が渦巻いており、カネロ自身もそうした声を気にしてか「何が悪かったかはわかっている」とあえて口にするなど、焦りが見え隠れする。精神的にはカネロの方がシビアな状況にあると言える。
また、これまでカネロが対戦してきたファイターとは違うタイプであることも勝負の分かれ目になると見る向きもある。
偉大な元ボクサーであるバーナード・ホプキンス氏(4団体時代において男女通して史上初のアンディスピューテッド王者)は、技巧派でありながらKOも狙えるチャーロがカネロにとって脅威になると予想する。
「チャーロは、カネロが戦ってきた相手とはまったく違うスタイルを持っている。チャーロは若く(※)、カネロの時代が終わったことを証明することにモチベーションも高い。カネロは早いラウンドで勝負をかけるべきだろう。試合が長引けば、カネロは不利になる。年齢だけのせいではなく、これまでと違う展開に戸惑うことになるだろう」と、ホプキンス氏は『Fight Hype』で語っている(※ホプキンス氏はカネロよりチャーロが若いと勘違いしているが、実際は同年の33歳)。
「この試合はハイレベルな攻防になるだろうが、チャーロは自分を証明することへの意欲が強い。チャーロは高い技術を持っているが、これまでにそれを披露する機会があまりなかった。カネロ(の実績)がむしろチャーロを引き立てるはずだ。チャーロが精神的にも強さを保てば、カネロにとって悪夢のような試合になるかもしれない。それほどスタイルの違いは大きい」
日程的な面でも、パウンド・フォー・パウンドの頂点に立つための計画を進めるのにもちょうど良いタイミングと言える。ボクサーにとって重要なのは健康状態を保つことだ。
チャーロは、今年1月末にスーパーウェルター級の4団体統一王座をかけて、WBO指名挑戦者ティム・チューと対戦する予定だったが、手の故障により中止になった。代わりに9月30日のカネロとの対戦を選んだ。
ここでスーパーミドル級(168ポンド)の4団体統一王者になり、その後スーパーウェルター級(154ポンド)に戻り、さらにウェルター級(147ポンド)まで階級を下げて、ウェルター4団体統一王者テレンス・クロフォードと戦い、名実ともに頂点に立つことを望んでいる。
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将来の計画がどうあるにせよ、今は兄弟共通の敵であるカネロ(当初、ジャーモールがカネロの対戦候補として噂されていた)を倒すことに集中している。さらなる王座と家族の名誉はチャーロにとってモチベーションを上げるには十分だ。
また前述したように、直近の試合である2022年5月14日のブライアン・カスターニョ戦以来、約1年4か月半のブランクがあるものの、チャーロはその間に負った怪我を治し、ヘルシーな状態でじっくり準備を整えてきた。一方、カネロはこの間に3試合(2勝1敗)をこなした。そうでなくとも同じ33歳でも計63戦を経たカネロと、計37戦のチャーロでは、一概に数値化はできないにせよ蓄積ダメージに違いがあるだろう。
チャーロはこれまでにも多くのネガティブな予想を覆してきた。カネロ戦を巡っては(2階級上の相手、ブランクによる試合勘の鈍りなど)不安要素もあるが、故障もしっかり治し、十分な準備期間も含めて最適のタイミングでスーパーミドル級の帝王に挑むことができる。ルイジアナ生まれのチャーロは、その王座を実力で奪い取るつもりだ。
原文:Is the Canelo Alvarez fight perfect timing for Jermell Charlo? Age, injuries, schedule factors in 2023 boxing bout
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁
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