デオンテイ・ワイルダーの衝撃の初回KO勝ちが、ヘビー級三つ巴トップバトルを加速させる

2019-05-21
読了時間 約3分

英グラスゴーでワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)準決勝で井上尚弥(大橋)が衝撃的な2ラウンドKO勝ちを収めた同日、米ニューヨークではWBC世界ヘビー級王者のデオンテイ・ワイルダー(米国)が1ラウンドKO勝利で、井上をも上回る興奮を世界中のボクシングファンに与えた。アンソニー・ジョシュア、タイソン・フューリー、そしてワイルダーの三つ巴となったヘビー級戦線の最新動向を探る。

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5月18日の夜(日本時間19日)、米ニューヨーク市ブルックリンのバークレイズ・センターでWBC世界ヘビー級王者デオンテイ・ワイルダーが、ドミニク・ブラジールを衝撃的な1ラウンドKOに沈めたことで、ソーシャル・メディアは騒然となった。このノックアウトシーンはそのインパクトの強烈さは言うまでもなく、アンソニー・ジョシュア、タイソン・フューリー、そしてワイルダーのヘビー級トップ戦線での直接対戦を望むファンの声をさらに大きくすることになった。

その声は来月ジョシュアとフューリーの2人ともが戦線に復帰することでさらに大きくなるだろう。ジョシュアは6月1日にマジソン・スクエア・ガーデンでアンディ・ルイズ・ジュニアを相手に米国デビューを予定し、フューリーは6月15日にラスベガスでトム・シュワルツと対戦する。

ワイルダーはブラジールを見事なKO劇で葬り、WBC世界ヘビー級王座を防衛した。“The Bronze Bomber(銅の爆撃機)”と呼ばれるワイルダーは、ニューヨークという世界ボクシング2大聖地のひとつで大きな印象を残しただけではなく、ライバルであるジョシュアとフューリーの2人に強烈なメッセージを送ったとも言える。

ワイルダーの42戦中40KOという戦績から見えてきたものは以下の通りである。

 

1:デオンテイ・ワイルダーは紛れもないスターである

40戦を越える長い年月を要したが、ワイルダーは今ではメディアが決して見過ごせない存在になった。ブラジールを沈めたKOシーンは、ワイルダーが現在のボクシング界で最大の、そして未知の脅威であることを証明することになった。昨年12月にフューリーと引き分けた後、 “ジプシーキング“(フューリーの通称)との再戦は実現せず、ワイルダーにはファンの興味を繋ぎ止めるために何かを成し遂げる必要があった。

ブラジールはファンが望むような名のある相手ではなかったが、ワイルダーは試合前に「合法的な殺人」と強烈なアピールをすることによって、ファンの興味を掻き立てることに成功した。両者には2017年以来の確執があることも報じられ、単なる消化試合となる恐れがあったこの対戦は、ゴング前から大きな盛り上がりを見せた。

ワイルダーはビッグマウス通り、早くも1ラウンド後半にはライバルであるブラジールの顎を強烈なストレートで打ち抜き、劇的な勝利を収めた。

“銅の爆撃機”は試合の前後にも話題を振りまいた。試合前にはフューリー戦で使った"'Til this day"(この日まで)の自身を有名にしたキャッチフレーズでメディアを楽しませ、KO勝利にも自信に満ちたコメントを出すことも忘れなかった。ワイルダーは、もはやマイク・タイソン以来のヘビー級のスターであることは間違いないように思える。

スポーツ専門局「ESPN」も人気ニュース番組「SportsCenter」でもこのKO劇を放映した。ワイルダーの試合はこれからもテレビで見ることができることには疑問の余地はない。

 

2:ワイルダー vs. ジョシュア戦は2020年夏以降?

ファンが望んでいるワイルダー vs. ジョシュアの再戦は、少なくとも次戦には実現しない。ブラジール戦後、ルイス・オルティス(キューバ)がインタビューでリングに上がり、ワイルダーへの挑戦を表明したのだ。ワイルダーとオルティスは2018年に対戦し、そのときはワイルダーが10ラウンドKOで勝利している。それ以前の問題として、プロモーションと放映ネットワークの政治的事情を鑑みると、フューリー(トップランク/ESPN)とジョシュア(マッチルーム/DAZN)との対戦はすぐには実現しないだろう(ワイルダーはディベイラ・エンターテインメント/PBC-Showtime)。

ワイルダーのマネージャーであるシェリー・フィンケル氏は、来週にもDAZN会長のジョン・スキッパー氏と面談し、ワイルダー vs. ジョシュア戦の交渉に入ることを示唆している。もっとも、これは現段階ではリッピサービスととらえた方がよい。少なくともジョシュアがルイズ・ジュニアに勝たない限りは、絶対に実現することはないプランだ。

全てが順調に進んだとしても、ワイルダーがオルティスと戦うのは今年の後半になり、その後は2020年前半にアダム・コナッキ(ポーランド)との試合が控えるとされる。そうなると、ジョシュアかフューリーとの対戦があるとすれば、2020年の中頃か後半以降だと思われる。

 

3:ワイルダー、ジョシュア、フューリーの3人がヘビー級のトップである

かってないほどの盛り上がりを見せているヘビー級戦線であるが、いよいよトップ3人による三つ巴の様相を示してきたようだ。そして、この3人と他のボクサーとを隔てる距離はますます大きくなるばかりだ。

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ブラジールは他のボクサー相手には良い戦績を残していたが、ジョシュアとワイルダーとは大きな実力差があった。フューリーにとっての強敵はワイルダーだけであったし、ワイルダーにとってのフューリーも同じことが言える。ジョシュアが今までに対戦した中で最大の難敵だったのは、既に引退したウラジミール・クリチコ(ウクライナ)だろう。2017年のこの対戦でジョシュアはKO勝ちを収め、WBA(スーパー)とIBFの世界ヘビー級王座を奪取している。

2019年5月現在のヘビー級戦線の2番手グループ(オルティス、ディリアン・ホワイト、アレクサンデル・ポベトキン)、3番手グループ(コナッキ、ジョセフ・パーカー、クブラト・プレフ、オスカー・リバス)と見られるボクサーのなかには、トップ3人を破ったことがあるか、あるいはその可能性があると思わせる名前は見当たらない。それ故に様々な政治的な事情によって、この2番手、3番手グループがトップ3人に絡む対戦が今後も続くだろう。

その中ではワイルダーの予定が最もはっきりしているが(オルティスとコナッキ)、ジョシュアとフューリーに関しては現時点では不透明だ。ジョシュアはロンドンのウェンブリー・スタジアムへ帰り、今秋にホワイト vs. リバス戦の勝者と対戦するかもしれない。フューリーはシュワルツ戦の後はプレフと戦う可能性がある。

ただ、ボクシングファンにとっては幸運なことに、他のヘビー級ボクサーたちも決して楽な相手というわけではなく、彼らがトップ3人に挑む試合はそれなりにエキサイティングなものにはなるはずだ。それでもなお、この3人が来年までのしばらくの間はヘビー級のトップの座に居続けることは予想に難くない。

もっとも、ファンの興味はフューリー、ワイルダー、そしてジョシュアの直接対決が決まるまでは満足することはないだろう。それまでには長い待ち時間がある。皮肉なことに、ワイルダーの株が急上昇したことによって、そのワイルダー相手にゾンビばりのタフネスを示したフューリーの名が再び脚光を浴び、そこから三つ巴への期待が広がることでジョシュアを推す声も大きくなっている。ワイルダーの初回KO勝ちが呼び水となり、将来のトップ3によるビッグファイトはその価値をさらに上げたと言えるだろう。

原文:What we learned from Deontay Wilder's 1st-round knockout of Dominic Breazeale
翻訳:角谷剛
編集:SNJ編集部

 

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※記事はIOC公式サイト『Olympic Channel』提供

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