【F1ガイド】2023年のF1の変更点を学んでおこう Vol.2:車両編(重量・ポーポイズ・安全性・燃料冷却)

2023-02-03
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F1の2023年シーズンに向けた動きが、徐々に活発化している。新シーズンはマシンや大会形式のレギュレーション(ルール)のほか、タイヤの仕様などもいくつか変更される予定となっていて、これまでとはまた違ったレース展開となることが考えられる。すでに決定のうえで発表されているものをこの記事で紹介し、新シーズンに向けた「予習」を始めよう。

2回目となる記事では車両についての変更点のおさらいだ。【Vol.1 タイヤ・スプリント・新型コロナ対策編はこちら

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大まかには変わらずも

基本的には昨シーズンの車両規則がベースとなっているため、大きな変更はないものの、まず車両重量が2kg引き下げられ、燃料のない状態で796kg以上とされた。そもそも、昨シーズンの規則改定の段階で795kg以上となる予定だったのだが、各チームが軽量化に苦戦し、最低重量より重くなる…となったため、798kgとされた経緯がある。そのため新シーズンは、もともとの重量規定により近づいたかたちとなっている。

また、昨シーズン多発したのが、マシンの上下振動である「ポーポイズ(ポーパシング)現象」。オンボード映像で見てもドライバーたちの顔が大きく揺れていることがわかったF1ファンも多かっただろう。簡単に説明すると、昨シーズンからの規定で、ウイングなどの細かなパーツではなくマシン全体での空力性能を出す、「グランドエフェクトカー」と呼ばれる構造となったことが影響している。当然、ドライバーたちにとっても良い影響はなく、特にポーポイズ現象に悩んだメルセデスのルイス・ハミルトンが、レース後に背中の痛みを訴えるシーンもみられた。

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これを解決するべく、2023年シーズンはマシンのフロアエッジ(左右の端)の高さが15mm引き上げられたほか、マシン後部の空力パーツである「ディフューザー」の効果を弱めるような変更が加えられた。これによって、マシン全体が空気の力に頼りすぎない構造になり、結果的にポーポイズ現象を抑えられる、という狙いがあるのだ。

ただ、これまでこうした変更が行なわれると、走行中の風圧によって空力パーツをたわませて、規定よりも低く、よりパーツが効果を発揮する位置で走る…という疑惑が頻繁に挙がっている。そのため、荷重テストも同時に強化することで、各チームがルールの抜け穴を突かないような対策に打って出ている。

またポーポイズ現象については、FIAがマシンにセンサーを取り付けており、上下振動が強くなりすぎないように監視される。こちらは昨年途中から導入されていたものだが、これが引き続き行なわれる。

さらなる安全性の強化を

昨シーズンのイギリスGPで、周冠宇(アルファロメオ)がほかのマシンとの接触から横転するクラッシュ。幸いにして周に大きなケガはなかったものの、このクラッシュで横転した際に、ドライバーの安全を守るためのロールフープが破損してしまった。

ロールフープはICE(エンジン)への空気の取り込み口の役割も果たしているほか、空力的に影響を受けやすいマシンの中心部にあるため、より空力的に有利になる構造を各チームが採用してきた。もちろん、クラッシュテストで実際に衝撃を与えることで、この構造は認められてきたのだが、実際に起きたクラッシュによって、ドライバーの命が守られない可能性があることが浮き彫りになった。そうとなれば話は別。

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新シーズンについては、ロールフープの形状をより細かく定め、円形のロールフープとされることが決まった。さらに横転時にも外れないかを確認するため、荷重をかけたテストを行うとしている。

(Getty Images)

さらに、昨シーズンはランス・ストロールが後方から迫ったフェルナンド・アロンソと接触、アロンソが危うく宙を舞いかけた。この件に限らず、ドライバーたちからは後方視界の悪さを訴える声が挙がり続けていて、今季についてはマシンに取り付けられるサイドミラーの幅を50mm拡大することで手を打った。ただ、もともと視界を広げるために湾曲したミラーを使っていたドライバーたちからすると、サイズ拡大の効果は疑問符がつくところらしく、新たな解決策が待たれるところだ。

目に見えないが、重要な変更も

今2023年シーズン、目に見えないものの大きな変更点となるのが、燃料の冷却に関するレギュレーション変更だ。これまで、マシンに使われる燃料は長らく、「周囲の温度より10℃低い温度、または20℃のどちらかよりも冷やしてはいけない」と決められていた。

燃料を冷やすことには、さまざまなメリットが存在する。一つは、パワーユニットの過熱を防ぐことができる。また、冷やすことで体積が小さくなることから、エンジンの中により効率的に燃料を送り込める。これもパワーアップに寄与する部分だ。一方では、燃料の冷却が給油時間の短縮という効果をもたらしていた。かつてのF1はレース中に給油を行なっていたこともあって、この「冷やしすぎないルール」はそこに対する一定の規制の役割でもあったのだ。

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ただ、中東での開催、あるいは夏場のレース開催が次第に増えているなか、マシンにとって熱は大敵となる。高熱にさらされ続けることで、エンジンやパワーユニットのトラブルの原因にもなる。熱い環境のレースでは、走行中に燃料も路面からの熱を受けて温まり続けることが考えられる。

2023年シーズンは、ここが大きく緩和され、「周囲の温度より10℃低い温度、または10℃のどちらかよりも冷やしてはいけない」とされた。つまり、燃料をこれまでよりも冷やしてよいとされたのである。今後も開催地やレース数の拡大を狙うであろうF1において、信頼性の確保を狙ったルールの導入は大きなポイント。10℃の違いが、各チームにかなりの影響を及ぼしていくだろう。

2023年シーズンも随時更新!

スポーティングニュース日本語版では、2023年もレース結果や放送配信予定に加え、英語記事だけでなく、F1人気が高い欧州の空気感を伝える本誌スペイン語記事の翻訳版など随時更新する予定だ。

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