欧州ゴルフの『DPワールドツアー』が、現地時間6月24日、サウジアラビア政府資本による新リーグ『リブゴルフ』参加者への措置を発表し、10万ポンド(約1658万円)の罰金と、7月の米PGAツアーとの共同開催の3大会については出場停止となることが決まった。
これまで『リブゴルフ』参加者について、明確な措置を発表していなかった欧州ツアーが、リブゴルフの第2戦(6月30日~7月2日、米オレゴン州ポートランド、パンプキンリッジGC)を前に、10万ポンドの罰金と、メジャー大会のひとつ『全英オープン』の前哨戦シリーズとなる、『ジェネシス・スコティッシュ・オープン』(7月7~10日、スコットランド・ルネサンスクラブ)、『バーバゾル選手権』(7月7~10日、米ケンタッキー州キーントレースGC)、『バラクーダ選手権』(7月14日~17日、米カリフォルニア州タホマウンテンクラブ)の3試合への出場を認めないことを決めた。3大会はいずれも欧州ツアーと米PGAツアーの共催となっている。
欧州を主戦場とする、リー・ウェストウッド、イアン・ポールター(ともに英国)、グレアム・マクドウェル(北アイルランド)、セルヒオ・ガルシア(スペイン)、マルティン・カイマー(ドイツ)らが対象になる。『ジェネシス・スコティッシュ・オープン』は欧州ツアーのなかでも最大規模の大会となるが、リブゴルフメンバーの排除に踏み切った。
米PGAツアー(ジェイ・モナハン会長)は、リブゴルフ開幕戦に出場した17人に対し、会員からの脱退か残留の意思にかかわらず、全員に無期限の資格停止措置をくだした。今回、欧州ツアーは、限定的な措置を採ったかにみえるが、7月のリブゴルフ第2戦以降も参加した場合は、罰金は2倍となり、さらなる大会からの排除という追加措置がくだる可能性があると、欧州メディア『Eurosport』が伝えた。
DPワールドツアー最高経営責任者キース・ペリーは、「この選択肢(リブゴルフ)を選んだ選手たちは私たちのツアーを軽視しているだけでなく、プロゴルフにおける実力主義のエコシステムをも軽視している」と断じ、「彼らの行動は、私たちの会員の大多数にとって公平ではなく、ツアーを弱体化させる行動をとっている。それが今日の発表の理由です」と非難した。
欧州ツアーにとっては、メジャー覇者でもあるガルシアやマクドウェルらはスポンサーの引きも良いスタープレーヤーであり、なくてはならない存在といえる。そんな欧州系のリブゴルフメンバーを失えば、将来的に欧州ツアー自体がスポンサーを失うリスクがつきまとう。それでも、米PGAツアーとの関係性を保つため、こうした(段階的な)措置をとらざるを得なかったのではないかと、英『BBC』は分析している。
コロナ禍で各大会の賞金が減額されるなど苦境にあった欧州ツアーは、アラブ首長国連邦(UAE)の港湾会社『DPワールド社』に2022年からの命名権を売却している。そもそもは2009年、リーマンショックによる世界的大恐慌により、各大会の賞金が減額され、これまでツアー最終戦だった『ボルボ・マスターズ』から、のちに同社がタイトルスポンサーを務めることになる『ドバイ世界選手権』に置き換わっている。サウジ資本ではないものの、早くからオイルマネーが投入され、ツアーが持ち直した経緯がある。
そんな欧州ツアーの背景もあってか、米PGAツアーは、2020年当時、すでに構想が伝えられていた新リーグ構想(=リブゴルフ)への対策として、先手を打つようにして戦略的パートナーシップ提携を結び、自陣営に確保した。アジアツアーが当時3億ドル(約345億円)規模でリブゴルフ運営会社に買収されたことを考えれば、米PGAツアーの対抗策は欧州ツアーを「守るため」でもあったといえるだろう。しかし、欧州ツアーにとっては「痛し痒し」が実情のようだ。
なお、7月14日開幕の『全英オープン』の主催者は、リブゴルフメンバーが持つ出場資格について認めることを発表しているが、彼らがプレイに集中できるかは不透明だ。『全米オープン』に出場したリブゴルフメンバーは、メディアの質問攻めに遭い、多くが不調で大会を終えている。