フィラデルフィア・76ersはこの夏、最もオフシーズンが注目されるチームだ。ダリル・モーリー社長は様々な道を進むことができる。
NBAプレイオフ2024でニューヨーク・ニックスを相手にファーストラウンド敗退となり、その決断が重要になることは確かだ。ジョエル・エンビードは30歳になった。彼を中心にタイトルを競えるだけの本物のチームをつくっていく時間は限られてきている。モーリーには完全にロスターを変える力も、どの選手を残すか選ぶ力もある。より可能性が高いのは後者だ。
『ESPN』のボビー・マークス記者によると、76ersはタイリース・マクシーを5年2億500万ドル(約313億6500万円/1ドル=153円換算)で残すこともできる。制限つきのフリーエージェントとあり、彼をどこかへ失う懸念は少ない。
ここでは、76ersの選択肢をまとめていく。
76ersの今後のフリーエージェント
FAになる選手は多い。完全に保証されているのは、エンビードの年俸5140万ドル(約78億6420円)だけだ。
無制限FA | 制限つきFA | プレイヤー・オプション | チームオプション/無保証 |
トバイアス・ハリス | タイリース・マクシー | なし | ポール・リード |
バディー・ヒールド | タークエイビオン・スミス* | Jeff Dowtin | |
ニコラ・バトゥーム | リッキー・カウンシル四世 | ||
ロバート・コビントン | |||
ディアンソニー・メルトン | |||
ケリー・ウーブレイJr. | |||
カイル・ラウリー | |||
モー・バンバ | |||
ドウェイン・デッドモン | |||
キャメロン・ペイン |
*2ウェイ契約
マクシーはもちろん戻るだろう。また、76ersはFAで外から選手を求めることをしないと決めた場合、自分たちが望めばすべての選手を戻す可能性もある。
ディアンソニー・メルトン、ニコラ・バトゥーム、ケリー・ウーブレイJr.は、それぞれ健康なら76ersで良いプレイをしてきた選手たちだ。安価なサラリーのベテランたちで、戻すべきだろう。バディー・ヒールドはトレードの際に言われたほどではなかったが、エンビードと並べるシューターとして理にかなう。
76ersのファンが退団を望むかもしれないひとりがトバイアス・ハリスだ。2019年に結んだ5年1億8000万ドル(約275億4000万円)の契約がついに満了となる。『The Inquirer』のキース・ポンペイ記者によると、彼にはデトロイト・ピストンズが関心を寄せているようだ。
76ersの今後のサラリーとロスター
76ersは少なくともあと2シーズン、エンビードを確保できる。ポール・リードの契約は、ファーストラウンドを突破していたら保証されていただろう。保証されている契約がこれほど少ないチームは76ersだけだ。
金額はすべて『Spotrac』から。
選手 | 2024-25 | 2025-26 | 2026-27 | 2027-28 |
ジョエル・エンビード | $51,415,938 | $55,224,526 | $59,033,114(PO) | UFA |
ポール・リード | $7,723,000 (NG) | $8,109,150(NG) | UFA | |
Jeff Dowtin | $2,196,970 (TO) | UFA | ||
リッキー・カウンシル四世 | $1,891,857(NG) | $2,221,677(NG) | $2,406,205(TO) | UFA |
PO = プレイヤーオプション
TO = チームオプション
NG = 無保証
UFA = 無制限FA
RFA = 制限つきFA
76ersのNBAドラフト2024の指名権
NBAドラフト2024で76ersには2つの指名権がある。
1巡目
- 全体16位指名権
2巡目
- 全体41位指名権
- 全体46位指名権(はく奪)
もともとの2巡目指名権は、2022年のFAでPJ・タッカーと事前に交渉していたことではく奪処分となった。41位指名権はシカゴ・ブルズから獲得している。
喫緊の課題
76ersはサラリーキャップの空きをどう活用するか?
76ersは容易に6000万ドル(約91億8000万円)超の空きをつくれる。大きな問題は、それをどう生かすかだ。
今季のFAは人材が豊富ではない。もちろん、レブロン・ジェームズやポール・ジョージが突然移籍を望む可能性はある。そうなったら、どちらかを獲得するだけの十分な余裕を持つ優勝候補の一角は、実質的に76ersだけだ。インサイダーのマーク・スタイン記者によれば、ジョージへの関心の噂はある。
しかし、そういったビッグネームの選手たちは、残留する可能性が高い。そうなれば、次はデマー・デローザン、クレイ・トンプソン、マイルズ・ブリッジズといった選手たちだ。その次のリストはかなり落ちる。
だが、だからといって、必ずしも76ersのキャップスペースが無駄になるわけではない。『Liberty Ballers』でブライアン・トポレク記者が指摘したように、フロントオフィスは新たなエプロン(※例外条項などの制限を決定する基準額)のルールを生かすかもしれない。
トポレク記者が報じたように、ラグジュアリータックス(ぜいたく税)を払うチームはより積極的に大型契約を手放そうとするだろう。76ersは優れた選手のトレードで恩恵を受けられるかもしれない。資産を失うことなく、そういった選手たちを獲得できる可能性がある。財政面で苦しいチームを救う代わりに、ドラフト指名権を戻すことができればなおよしだ。
もうひとつの選択肢は、自前の選手たちを残すことだ。ボストン・セルティックスに挑戦するには十分と思われないが、エンビードが負傷するまでチームはとても良かった。トレード市場にさらなる大物が出回るまで、競争力を保つことができる。
サイン&トレードもひとつの選択肢だ。ただ、エプロンに関するリーグの新ルールにより、複数のチームはトレード相手にならない。
76ersには、スター選手が獲得可能になった場合に円滑に進めるためのドラフト指名権がたくさんある。ドラフト前に2026年、28年、29年、30年の1巡目指名権を使うことが可能。ドラフト後は、2031年の指名権に加え、2024年の指名選手もトレードできる。動かせる2巡目指名権も多い。
おそらく、最善の選択肢は我慢だ。76ersが獲得できそうなFA選手は、ゲームチェンジャーにはならないだろう。だが、トレードで新チームを目指すスター選手は毎年いる。来季、セルティックスと本当に競っていけるだけのチームとしてくれる最高級の選手を手に入れるためには、それがベストの道だ。
原文:76ers eliminated from playoffs: Paul George and other free agent targets for Philly in crucial 2024 offseason(抄訳)
翻訳:坂東実藍