キャリアハイの活躍で見えた、ダリアス・ベイズリーの将来性

2020-08-16
読了時間 約4分

再開シーズンでキャリアハイ

若い頃――といっても、20歳のオクラホマシティ・サンダーのルーキー、ダリアス・ベイズリーにとってはそれほど昔のことではないのだが――彼は一人で公園に行き、右手でシュートを打っていた。もともと右利きだったのだが、彼のシュートは外れ続けた。

ベイズリーは独り言を言いながら、どうしたらシュートが良くなるのか、まるで自分自身に見せるように、自分で自分をコーチした。そして左手でシュートを打ち始めたとき、ボールがゴールに入り出して、彼は少し驚いた。それ以来、彼はジャンプシュートを左手で打つ。しかし、ダンクを含む、日常生活のすべてにおいては右手を使う。

ほとんどの対戦相手が、ベイズリーが両手を使えることに気づいていないのは明らかだ。なぜなら、ベイズリーをクローズアウトするとき、ディフェンダーは彼の右側のレーンを開けているのだ。彼は、喜んでそれに応じてゴールにアタックする。シーズンが再開してからこれまでのところ、彼はジャンプシュートは左手で決め、ゴール周りの巧みなシュートは右手で決めている。

8月10日(日本時間11日)にサンダーが121-103でワシントン・ウィザーズに勝利した試合で、ベイズリーは、キャリア最多の5本の3Pを含む、フィールドゴール13本中8本を成功させて、キャリアハイとなる23得点を記録した。そのパフォーマンスによって彼は、1試合で20得点以上をあげたサンダー史上7人目の新人となった。シーズン再開後、彼は平均二桁得点を記録している。

「僕の自信は、僕のことを信頼してくれるチームメイトやコーチから来るんだ」と、ベイズリーは言う。

「みんなが僕のことや僕ができることを信じてくれているってわかっているから、僕はコートに出て自信を持ってプレイできるんだ」。

コートでチームメイトからパワーをもらうまでは、ベイズリーがそれを与える側にいる。ウィザーズ戦では実際、いつも元気いっぱいの彼が最初にリズムを掴んだのは、彼がまだベンチにいて、ファーストユニットがプレイをしている最中だった。それは、フロントコートプレイヤーのマイク・マスカーラが、スティーブン・アダムズとナーレンズ・ノエル(それぞれ脚と足首の痛みで試合直前に欠場)の代わりにセンターとしてスタートしていたときのことだ。

試合の最初の数分で、マスカーラは3Pを決め、クリス・ポールのドロップパスを受けてトップからさらにもう1本3Pを決めてみせた。マスカーラのリリースしたボールが頂点に達する前に、ベイズリーはサイドラインに出てきて踊り出し、スリーが決まったこととその直後にウィザーズがタイムアウトを取ったことを喜んでいたのだ。

そのゴールでサンダーが10-0とリードしたあとに、ベイズリーがセカンドユニットのセンターとして出場するときがやってきた。ほんの数週間前、サンダーのヘッドコーチ、ビリー・ドノバンは、昨年組織的なバスケットボールをしていないベイズリーは、将来的には複数のポジションをプレイすることになると予測しているが、現時点ではパワーフォワードが最適だと述べていた。

しかしこの日、6フィート8インチ、208ポンド(203cm、94.3kg)の彼は、チームが求める任務の遂行のため、ウィザーズのトーマス・ブライアント(6フィート11インチ、248ポンド/208cm、112.5kg)と、モリッツ・バグナー(6フィート11インチ、245ポンド/211cm、111.1kg)を相手に、低い体勢で対抗していた。

「僕はただとにかく、チームとコートに出て、僕に求められている仕事をする機会に感謝しているんだ」と、ベイズリーは言う。

ベイズリーは、身体を低くしながら、ボールを持つ相手の正面についていられるように素早く動き、ピック&ロールでも迅速にリカバーした。従来のセンターと比べて小さな体格にもかかわらず、彼は7リバウンドを記録した。

実はサンダーがオーランドに来たばかりの頃、ベイズリーは練習でノエルの代役をし、265ポンド(120kg)のアダムズと競い合っていたという。アダムズを相手に踏ん張ることができれば、誰が相手になっても太刀打ちできるというわけだ。

「ただ練習でやってきたことをしているだけだよ。自分たちの原則に忠実に、みんなでヘルプして、自分たちの長さを活かして、できるだけ相手がドライブしにくくなるようにしているんだ」と、ベイズリーは説明する。

「ゴールまでの間に僕らが立ちはだかるようにしてね」。

203cmの身長と両手を使える能力

ベイズリーは、ウィザーズ戦で最初のシュートを外したが、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーによる速攻からの見事なドロップパスを受けて、左ウィングから楽にノックダウンスリーを決め、そこから調子を上げていった。

Scroll to Continue with Content

2019年のドラフトで1巡目全体23位指名を受けた彼は、高校最終学年から昨年7月にサンダーに加入するまでの間、ニューバランスでインターンをしながら自分でトレーニングをしていたこともあり、3Pを量産するタイプのシューターではなかった。しかしバブル(隔離施設)では、彼の3P成功率は41.6%(フィールドゴール26本中10本成功)で、1試合で少なくとも22分出場し、今シーズンの平均出場時間から8分増えている。

「本当にすごいことだよね」と、ベイズリーの成長についてクリス・ポールは言う。そして自分とベイズリーのことをからかうように、こう続けた。

「昨日誰かが僕にツイートを見せてきたんだけど、2005年が特別なのは、それが僕がドラフトされた年で、ベイズが幼稚園に入った年だからだって言うんだよ」

ディフェンスとシュートと出場時間のほかに、ベイズリーの長期的な将来性を最も示していたのは、とりわけ彼のあの背の高さで、どちらの手でボールを持っていても、自信を持ってゴールに向かっていけるその能力だ。ユタ・ジャズと対戦した最初のシーディングゲームでは、彼はコートの左サイドで、ダブルチームを相手にアタックしたのだが、そのうちの一人は、2度の最優秀守備選手賞に輝いたルディ・ゴベアだった。巨大なフランス人を相手に、ベイズリーはレーンを横切り、巧みに右手でレイアップを決めてみせた。

「(ベイズリーは)ゴール周辺で本当に両手が使える。だからシュートを外したときでも、自分でまたジャンプしてティップインすることがある」と、ドノバンHCは指摘する。

「僕が5番をプレイする利点は、多くのセンターは明らかに僕よりも大きくて、大抵僕よりも遅いから、オフェンス面では僕にアドバンテージがあるってことだね」と、ベイズリーは話す。

ウィザーズ戦でコートの右サイドにいたとき、ベイズリーは再びトラップが来ると感じた。そこで自分を囲い込もうとする2人のディフェンダーの間をすり抜けて、機敏に流れるようなレイアップを右手で決め、第2クォーターの最初の2分15秒で早々と連続7得点を達成した。4か月のシーズン中断を経て、ベイズリーは意思決定能力が上がったことを見せているが、それは同時に、オフシーズンをどう過ごすかで、若い選手のゲームが向上することも示している。

「(ベイズリーは)いつフェイクしてドライブに行くべきか、それに明らかに、いつスリーを打つべきかを本当に良くわかっていたと思う」と、ドノバンHCは言う。

「ダリアスはクローズアウトされたところからプレイを作っていた。彼が右にドライブするときは、右にドライブしている限りは、彼には右手でフィニッシュする優れた能力がある。相手をかわして進み、手を伸ばすことができるんだ」。

ベイズリーのNBAのキャリアは始まったばかりで、ウィザーズ戦で記録した得点が、どれだけキャリアハイとして残るのかはわからない。インサイドとアウトサイドの両方から得点できる能力を見ると、その記録が塗り替えられる日はそう遠くないかもしれない。

サンダーにとって最も重要だったのは、シュートを決め続けている間も、ベイズリーがディフェンスにコミットし、スペースを作るためにコートを走り、スタッツシートに残らなくても勝利に必要なハッスルプレイをしていたことだ。新人の彼にそれができ、多少得点にも貢献できるようであれば、まもなく始まるプレイオフだけでなく、来シーズン以降も、彼は影響力のある選手になり得るだろう。

「彼は素晴らしい若者だよ。彼に起きているすべては、当然のことだと思う。彼はハードワーカーだし、このリーグで“良い選手”になるだろうね」。

ベテランセンターのマスカーラは、ベイズリーについてそう熱く語ってから、自分の発言をすぐに訂正した。

「“素晴らしい選手”になるだろうね」

原文: Bazley’s Career Day a Sign of Long-Term Prospects by Nick Gallo/OKCThunder.com (現地8月9日掲載)
翻訳: YOKO B Twitter: @yoko_okc


NBA公式動画をチェック!