レブロン・ジェームズという名の砦を越えなければ得られないNBA優勝のレガシー

2020-10-19
読了時間 約3分

レブロン・ジェームズは、NBA選手なら誰もが入店したい最高にホットなナイトクラブのオーナーのような存在だ。そのナイトクラブが実在するとして、店名を『The Larry O’B』――響きは大衆酒場のようだが、この意味は読み進めてもらえればわかるだろう――としよう。

ジェームズのチームメイトとしてVIPリストに名を連ねている場合、この店に入れる可能性が極めて高いことは歴史が証明している。彼の対戦相手で、VIPリストに含まれていない場合、入店を許されない可能性は劇的に高まってしまう。もしジェームズが所属するチームと同じカンファレンスのチームに所属している場合、店の外で並ぶことは可能だ。ただ、この場合も店内に足を踏み入れることなく家に帰ることになるだろう。

もちろん例外もある。ジェームズの隙をついてこのクラブに入店できてしまう選手だっている。例えばケビン・ガーネット、ポール・ピアース、ダーク・ノビツキー、カワイ・レナード、ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ケビン・デュラントらを指すのだが、これを実現させるには歴代トップクラスの存在にならなければ難しい。誰もがジェームズのセキュリティを突破できるわけではないのだ。

ジェームズの通算プレイオフ勝利数は、7球団を除く23チームより多い。そして彼の通算NBAファイナル進出回数(10)は、ロサンゼルス・レイカーズ、ボストン・セルティックス、ゴールデンステイト・ウォリアーズ以外のチームのそれを上回っている。

ジェームズの助けにより、これまで多くのスター選手たちがVIPリストに名を連ね、優勝のレガシーをキャリアに残すことに成功している。その枠に入った選手はクリス・ボッシュ、ケビン・ラブ、カイリー・アービングらで、直近ではアンソニー・デイビスとドワイト・ハワードだ。

これらの選手たちは、ジェームズの手助けがなくても素晴らしいNBAキャリアを送ることができただろう。しかし、ジェームズの助けにより、彼らにとってキャリア初のNBA優勝を達成できたのも事実だ。

ボッシュはトロント・ラプターズに在籍中オールスターに5度選出され、平均20得点、10リバウンド近いスタッツを残していた。ラプターズ時代はプレイオフ・ファーストラウンドの壁を一度も超えられなかったものの、2010年の夏にジェームズとドウェイン・ウェイドに誘われる形でマイアミ・ヒートに加わって以降、4年続けてファイナルに進出し、2度も優勝している。

ラブはミネソタ・ティンバーウルブズ時代(2008-09~2013-14シーズン)にオールスター選出3回を誇った選手で、クリーブランド・キャバリアーズにトレードされた当時はリーグでベストフォワードの一人と評価されていた。その彼も、1年目から6年目までは一度もウルブズを勝率5割以上に導けなかった。アービングは将来有望な若手として注目されていたが、ラブと同様に、キャブズを一度も勝率5割以上のチームにできていなかった。

2人は、ジェームズと組んでからの3年でファイナル進出3回、そして優勝1回を成し遂げている。

2019-20シーズンの場合、デイビスがこの例に該当する。世代を代表する選手である彼もまた、ニューオーリンズ・ペリカンズ時代にオールスター選出6回を誇っているが、プレイオフではカンファレンス準決勝の壁を一度も越えられなかった。ハワードはキャリア序盤を過ごしたオーランド・マジック時代にリーグを席巻し、2009年にファイナルに進出したが、それからは一度もファイナリストになれていなかった。

彼らも昨オフにジェームズのチームに加わり、1年目に優勝を果たしている。

ジェームズの力によって優勝という肩書きを得たロールプレイヤーの数はさらに多く、今も『The Larry O’B』の入店待ちの列に並んでいる選手で、結果的に家に帰ることになった選手の数はそれ以上だ。

例えば、ポール・ジョージ(ロサンゼルス・クリッパーズ)を挙げてみよう。彼はポストシーズンでジェームズのチームと過去に4回対戦している(2012、2013、2014、2017年)。ジョージが所属していた当時のインディアナ・ペイサーズは優勝候補と言われ、ジェームズのチームを何度か追い詰めたこともあった。2012年にはシリーズ第3戦までを終えて2勝1敗とリードし、2013年には第7戦にまで持ち込んだ。そして2014年には2勝1敗とリードし、第7戦までもつれたのだが、レブロン・ジェームズという砦を一度も越えられなかった。

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デマー・デローザン(サンアントニオ・スパーズ)もそのひとりだ。彼が所属していた当時のトロント・ラプターズは、球団史上初のファイナル進出を狙えると見られていた。だが、ジェームズのチームと対戦した3シリーズ中2シリーズ(2017、2018年)でスウィープ負け(0勝4敗)を喫している。この結果により、ラプターズの本拠地トロントを“レブロント”と揶揄するNBAファンも現れるほどだった。

先日インタビューを受けたデローザンは「彼に勝つのがどれだけ難しいか、みんなは知らない」と答えた。

「ウェストでも同じことをやれているなんて、本当にすごい」。

直近では、ファイナルでレイカーズに敗れたマイアミ・ヒートのジミー・バトラーがこのリストに入ることとなった。しかし、彼がジェームズに阻まれたのは今回が初めてではない。かつて所属していたシカゴ・ブルズは、デリック・ローズ、ジョアキム・ノアらを擁し、選手層も厚かったものの、ジェームズのチームに勝てなかった。これも、3人のスター選手がジェームズに優勝を阻まれたひとつの例だ。

このリストはまだまだ続く。

アル・ホーフォードは、アトランタ・ホークス時代に3度ジェームズのチームにスウィープされている(2009、2015、2016年)。またセルティックスに移籍した後も、ジェームズのチームにカンファレンス決勝で2度も負けた(2017、2018年)。

ジェームズの親友、カーメロ・アンソニーもニューヨーク・ニックス時代(2012年)、それからポートランド・トレイルブレイザーズの一員として彼と対戦した2020年、レブロン・ジェームズという砦を越えられなかった。

2019-20シーズンについて言及するのなら、シーズンMVP受賞歴のあるラッセル・ウェストブルックとジェームズ・ハーデンも『キング』に2度敗れている。

オクラホマシティ・サンダーの若手だった2012年はファイナルで、そしてヒューストン・ロケッツで再びチームメイトになった2019-20シーズンはカンファレンス準決勝でジェームズに敗れた。

もしレブロン・ジェームズがいない世界があるのなら、現代のNBAでプレイする選手の4分の1前後は、良くも悪くも異なるキャリアを送ったのではないだろうか。ジェームズが『The Larry O’B』入店を許可した選手全員が一度も優勝できなかったかもしれないし、入店待ちを続けている選手の全員が少なくとも一度は優勝する機会を得られていたかもしれない。

2019-20シーズンが物語るように、キャリア17年目に到達した今も、レブロン・ジェームズを越えなければ優勝することはできない。しかも、この流れが今後数年で変わるとも思えない。

原文:LeBron James is the NBA's championship legacy gatekeeper by Kyle Irving/NBA Canada(抄訳)


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