女性NBAコーチの先駆者、ベッキー・ハモンの挑戦

2019-10-10
読了時間 約2分

サンアントニオ・スパーズのアシスタントコーチを務めるベッキー・ハモンは、「人生には向上するためのおかしな道がある」と口にしたことがある。

同年代の女性コーチたちは同意するだろう。ハモンがNBAで初めてフルタイムの女性アシスタントコーチになってから5年。現在、NBAのベンチには10名の女性コーチがいる。その半分はこのオフシーズンに採用されたコーチたちだ。

今、世界は次のステップを待っている。ハモンが北米の主要プロスポーツチームで初めての女性ヘッドコーチとなることを。

スパーズのラマーカス・オルドリッジは「素晴らしいことだと思うな。そうなったら、彼女のことをうれしく思う。ハードワークしてきたからね」と述べた。

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問題は、それがいつになるかだ。今季のどこかになるかもしれない。昨季、グレッグ・ポポビッチHCが1週間のうちに2回退場となったのを考えればなおさらだ。

ポポビッチHCが退場になった場合、通常はもっとも経験のあるアシスタントコーチがヘッドコーチの責務を担う。

トップアシスタントだったエットーレ・メッシーナや2番目に経験豊富だったイメ・ウドカが去ったことで、もっとも経験のあるアシスタントコーチはハモンとなった。だが、ポポビッチHCは公式に彼女をリードアシスタントに任命していない。ウィル・ハーディをベンチの前に動かし、殿堂入り確実なティム・ダンカンをコーチングスタッフに加えた。

9月末のメディアーで、退場した際のことを問われると、ポポビッチHCは「そんな時のことまで考えているなんて、傷つくね」と冗談を飛ばしている。

2014年からスパーズのスタッフとしてハモンと仕事をしたウドカは、16年にわたるWNBAでのポイントガードとしてのキャリアが大きいと話している。ハモンはWNBAのオールスターに6回選出。通算の1試合平均得点(15.6)や通算のアシスト数(1133)、3ポイントショット成功数(829)でサンアントニオ・スターズの歴代最多をマークした。

実際、ハモンのユニフォームは、スパーズのレジェンドたちと並び、AT&Tセンターで永久欠番として飾られている。ブリン・フォーブスは、それがスパーズのロッカールームにおける彼女の信頼につながっていると述べた。「僕たちのだれも永久欠番じゃないからね」。

ウドカは『NBA.com』で「彼女は選手として経験しているんだ」と話した。

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「特に彼女はポイントガードだった。いつ自分や選手たちの冷静を保つべきかを理解しなければいけなかったんだ。選手たちを盛り立て、引っ張り、少し尻を叩かなければいけない時もある。それが彼女にとっては自然なんだ。彼女はあらゆる状況に対応できる。だから、コーチだろうが選手だろうが、簡単に対応できるんだ」。

2017年夏、オルドリッジがシステムの中でのやりづらさからトレードを要求した際、ポポビッチHCは慰留した功績をたたえられるにふさわしかった。だが、あまり知られていないのが、そのシステムの中でやりやすくなるように、ハモンがオルドリッジと仕事し、彼を助けたということだ。

オルドリッジは「僕を理解しようとしてくれたんだと思う」と話している。

「コートでより居心地が良くなるようにと、彼女は一層頑張ってくれた」。

2013年、ひざの負傷でリハビリ中だったハモンは、2013-14シーズンのかなりの期間でスパーズの非公式のスタッフとして働いた。それが、引退後のコーチとしての人生を考えさせたのだ。

その年、球団はハモンを練習やコーチミーテイング、映像レビューに歓迎した。ポポビッチHCは、彼女のバスケットボールIQの高さや仕事ぶり、対人スキルに感銘を受けていた。特に、ポポビッチHCが求めていた多様性にフィットしたのだ。

ハモンは同僚たちがどう思うかを気にせず、自分の意見を言い、自らの視点を示す。ウドカは「ポップ(ポポビッチHC)はディベートを望むんだ。衝突したり、違う考えを出すことを望む」と話した。

「彼は違う考えを聞きたいから、我々をけしかけるんだ。準備ができていて、宿題をやってきたのなら、見方が違えば自分の考えのために戦うものさ。彼女はそれをすることに問題がないんだよ。最初から彼女はそれが非常に明確だった。そして、だれもそれで問題にならなかった」。

ポポビッチHCはそれを美点とし、2014年にハモンをフルタイムのスタッフとした。

2019-20シーズンのスパーズにとって、恩恵となるかどうかは分からない。だが、かつてハモンが言ったように、「人生には向上するためのおかしな道がある」。

原文:The world is watching by Michael C. Wright/NBA.com(抄訳)​