ビクター・ウェンバンヤマのルーキーシーズンは、ここまで上出来のようだ。ただ、多くの人が期待していたほどのパフォーマンスではない。
スターティングラインナップの調整で、それが変わるかもしれない。
開幕からの20試合、サンアントニオ・スパーズはザック・コリンズをセンターに起用し、ウェンバンヤマがリーグ屈指の強くて大きな選手を守らなければいけないことがないようにしてきた。だが、チームが苦しんでいることで、コリンズに代えてマラカイ・ブラナムを起用することに。ウェンバンヤマがセンターを務めることになった。
これまで、散発的にウェンバンヤマがセンターとして試合を終えることはあった。そしてその時の彼は極めて効果的だった。驚きではないが、先発センターとしての役割でもウェンバンヤマは素晴らしい。変更以降、平均22.0得点、17.0リバウンド、3.0アシスト、5.0ブロックと素晴らしい成績だ。
ここでは、ポジションの変更がいかにウェンバンヤマの力を解き放つかをまとめる。
なぜウェンバンヤマはセンターでポテンシャルをさらに発揮できる?
相手のセンターがウェンバンヤマについていけない
ウェンバンヤマは自分よりもスローなセンターたちに極めて厳しいマッチアップを強いる選手だ。相手がスクリーンの後ろ側から対応しようとすれば、ドリブルから3ポイントショットにつなげられる。厳しくクローズアウトしようとしてきたら、パンプフェイクやステップバックで揺さぶることができる。
重要な局面でアンソニー・デイビス相手にこれができたなら、もっと機動性がないビッグマンを簡単に調理してしまうことが想像できるのではないだろうか。
守備側はセンターをリムの近くにとどめようとする。だが、ウェンバンヤマに対してはそれができない。ロサンゼルス・レイカーズが12月12日(日本時間13日)の試合で学んだとおりだ。デイビスがペイントを守ろうとした際、ウェンバンヤマはコーナーからオープンで3Pを沈めた。
また、ウェンバンヤマのボールを扱うスキルの高さも、相手センターにとっては守るのを極めて難しくさせる。ウェンバンヤマはまだ相手をポストで押し込むほど強くはないが、スパーズは彼がよりスローな相手をドリブルで抜いたり、かわしたりできるプレイをしている。
デイビスは彼の世代を代表するショットブロッカーのひとりだ。その彼でも、8フィート(約244センチ)のウィングスパンを持つウェンバンヤマ相手ではなすすべもない。
スパーズはシーズンを通じてポイントガードが問題だ。ジェレミー・ソーハンをフィットさせようとしてきたが、それがうまくいかず、特定のポイントガードを置かないアプローチを増やしている。ブラナムをスターティングラインナップに加えることで、全員がより良い視界を得るのに役立つはずだ。
もっとダイナミックなガードがいれば、ウェンバンヤマとのピック&ロールは相手にとって悪夢となるだろう。相手チームがセンターをリムから離してボールに2人をつければ、ウェンバンヤマがロールからバスケットに向かうのを止められるビッグマンはいない。対戦相手にとって今後問題となるだろう。
ハーフコートオフェンスでのウェンバンヤマのセンターも相手には問題だが、より大きな脅威となるのがトランジションだ。若くてストライドが長く、とてつもない範囲でキャッチできるウェンバンヤマは、リングに向かって走るのが素晴らしい。ポゼッションを得るや、シンプルにデイビス相手にフロアを駆けあがり、簡単なレイアップやファウルを誘うのだ。そしてオープンだったら、ロブでウェンバンヤマを止めることはできなくなる。
ウェンバンヤマがセンターのスパーズは守備が上出来
今季のスパーズの守備はリーグ24位とひどかった。だが、ウェンバンヤマがセンターになってからはエリートクラスだ。
センター | パワーフォワード | |
---|---|---|
3 | 試合 | 20 |
109.8 | ディフェンシブレーティング | 118.5 |
4位 | 守備ランキング | 27位 |
ウェンバンヤマはすでに素晴らしいリムプロテクターであり、平均3.0ブロックはブルック・ロペスと並んでリーグトップタイの数字だ。先発センターとなってからの3試合は、4ブロック、5ブロック、6ブロックを記録している。第4クォーターのころにはウェンバンヤマがいるリム付近でショットを打つのを相手選手が恐れるほどだ。
線が細いウェンバンヤマが1on1のマッチアップで巨大なセンターを相手にできるかという懸念はあった。レイカーズ戦では何度かリップスルーをされ、デイビスに強烈なポスターダンクを許すなどし、ファウルアウトしている。
それでも、大半でウェンバンヤマはうまくやっている。ニコラ・ブーチェビッチを相手に最初はやられたが、試合中に調整し、フィールドゴール9本中3本成功に抑え、3回ブロックした。年間最優秀躍進選手の候補であるアルペレン・シェングンには4ターンオーバーを強いている。
守備に関してウェンバンヤマをセンターにした最大の影響は、スパーズがより長い時間にわたってウェンバンヤマをコートに立たせられるようになったことだ。コリンズと一緒にプレイすることもまだあるが、ウェンバンヤマが2つのポジションでプレイできるようになり、出場時間がわずかながら増えている。
ウェンバンヤマは圧倒的にスパーズで最も貴重な選手だ。特に守備では、ウェンバンヤマがコートにいるかいないかで、100ポゼッションあたり8.3点も違っている。
スパーズはシーズンの序盤戦を使って実験し、選手たちに何ができるかを見てきた。ウェンバンヤマが活躍するためのより良い条件をより真剣にそろえようと準備を整えたようだ。ウェンバンヤマをセンターにしたのは、そのプロセスの第一歩。彼がこれまで以上に活躍できるようにするはずだ。
原文:Victor Wembanyama's move to center can unlock even more of Spurs rookie's potential(抄訳)
翻訳:坂東実藍