【宮地陽子の一戦一言】第33話:ニコラ・ヨキッチ「マイク(ポーターJr.)の3ポイントが2/11だったのに驚いた」

2023-06-03
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(NBA Entertainment)

選手やコーチたちの興味深いコメントの背景にあるものはいったい何なのか――? 米国ロサンゼルスを拠点に長年NBAを追い続けるライターの宮地陽子氏が、ある『一戦』で発せられた『一言』の真意を読み解く。

第33話となる今回は、NBAファイナル初戦でで活躍を見せたデンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチがマイアミ・ヒートとの第1戦後に語った言葉の裏側に迫る。


今日の一戦一言(いっせんいちげん)

ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ

「マイク(ポーターJr.)の3ポイントが2/11だったのに驚いた。7本ぐらい決めているかと思っていた。クレイジーなことだ」

6月1日(日本時間2日)、NBAファイナル第1戦でヒート相手に104-93で快勝してシリーズ先勝をあげたあと、記者会見場にやってきたニコラ・ヨキッチは、記者から質問が投げかけられる前にふとテーブルの上に置かれていたボックススコアに目を落とし、あるスタッツを見て目を丸くして驚いた表情を見せた。
 
会見中に、ボックススコアの何に驚いたのかと聞かれたヨキッチが言ったのがこの言葉。マイケル・ポーターJr.が3ポイントショットを11本打ち、2本しか決めていなかったことに驚いたと言い、むしろ7本、つまり打ったうちの半分以上を決めたような印象を持っていたというのだ。
 
この言葉には、ナゲッツの強さの一端が感じられる。ボックススコアにあったポーターJr.のスタッツは決して間違いではない。ポーターJr.は前半に3Pショットを5本中2本成功させたが、後半に打った6本はすべて外している。

それでも、ショットが決まっていない時間帯でも、攻守にアクティブに動き回り、リバウンドに飛び込み(試合を通してチーム最多の12リバウンド)、ブロックをするなど、間違いなくチームの勝利に貢献していた。シューティングも、たとえ入らなくても、打つべき場面で思い切りよく打っていた。
 
ジャマール・マレーは言う。

「彼(ポーターJr.)はすばらしかった。3P成功は1本か2本だけだったけれど、リムを攻め、14得点もあげた。ボールを追いかけ、すばらしいディフェンスもしていた。6フィート10インチの長身で、ショットを決めるだけにとどまらず、色々なことをしている。それができているときは、彼がウィングにいるだけでチームの助けになっている。ショットを決めていないときでも、打ち続けるし、僕らも彼にパスを出し続けるんだ」
 
時に、数字は選手の本当の活躍や、勝利への貢献を表さないことがある。ポーターJr.はそういったタイプの選手だ。
 
いや、ポーターJr.だけではない。ナゲッツにはそういう選手が何人もいる。そして、試合に勝ちさえすれば数字は大した意味がないということを、みんなが理解して戦っている。

27得点、10リバウンド、14アシストのトリプルダブルを叩き出したニコラ・ヨキッチでさえ、前半に10得点しかあげなかったとは思えないぐらいのインパクトを与えていたし、アーロン・ゴードンも後半は2得点しかあげていないが、試合開始からチームの流れを作り出すプレイをした。

スタッツだけ見ると目立たなくても、チームメイトたちにとってはいっしょに戦っていて頼もしいと感じる活躍をしている。チーム全員で戦い、全員で勝利を勝ち取っている。
 
ヨキッチは、そんなナゲッツのバスケットボールを「僕が習ってきたバスケットボールそのものだ」と言う。

「誰が攻めるのかわからないし、みんなが動き回っている。ディフェンスにとっては守りにくいと思う。とてもいい種類のバスケットボールだと思うし、みんながそれに前向きに取り組んでいるんだ」
 
チーム史上初優勝まであと3勝と迫ったナゲッツ。大事なのは数字ではなく、試合を戦う姿勢だということを、世界最高峰の舞台で見せている。


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