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馬場雄大が語る「元日本代表の父」と「僕の夢」(青木崇)

2020-03-30
読了時間 約2分

渡米前に果たした父との約束

昨年のNBAサマーリーグをきっかけに、馬場雄大(NBA Gリーグ テキサス・レジェンズ)は今シーズン、アメリカでプレイする機会を得た。現在25歳の馬場は、高校時代からアメリカ行きを熱望していたという。仲のいい渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ/メンフィス・ハッスル)が自分よりも先に渡米し、NCAAディビジョン1のジョージ・ワシントン大学でプレイしていたことに刺激を受けていた当時をこう振り返る。

「雄太はアンダー18(の日本代表)で一緒にやった選手で、渡米してやっていたから、僕が(アメリカに行ったら)どこまでやれるのかなというところから始まった。その思いは強かったですよね」。

香川県の尽誠学園高校卒業後に渡米した渡邊は、馬場の才能を買っていたものの、自身にNCAAでの実績がなかったこともあって、“アメリカに来いよ”と言うことができなかったという。渡邊の言葉次第で馬場の進路は違っていたかもしれない。

だが、馬場が筑波大学(茨城県)への進学を決めた理由は、かつて男子バスケットボール日本代表選手だった父、敏春さんの望みを理解し、受け入れるという意味もあった。それは教員免許を取得しての大学卒業だ。

僕という人間を形成してくれたのも、父の影響があったから

「父の存在がなければ生まれてこないわけですし、バスケを始めたきっかけも父ですし、それこそ高校のコーチとして3年間お世話になり、小学校、中学校の時にマンツーマンで練習したりして、バスケのインディビジュアル(個人)スキル、シュートフォームなど基礎中の基礎は父から教わりました」と、馬場は敏春さんについて振り返る。

「基盤を作ってくれた方だなと思っていますし、本当に父が代表だった分、超えたいという気持ちでやっていました。小さい時から夢を持ってやることができたからこそ、今もやれているのだと思います。僕という人間を形成してくれたのも、父の影響があったからかなと思います」。

敏春さんは三井生命の選手として活躍し、現役引退後は会社員生活をしていた。だが、早期退職を強いられ、教員免許を持っていなかったことにより、再就職で苦労したという。そんな自身の経験から、息子にはキャリアの短い選手生活を終えた後の第二の人生についても考えてほしいという思いがあった。

「すごく言われてきましたし、それだけは頼むとも言われました」と、馬場は当時の敏春さんの気持ちを説明する。

「先生の免許を取っていたらちゃんと5時から(富山第一高バスケットボール部の)生徒たちを見られるけど、事務(職員)だと時間が交互していて指導する時間が設けられないという意味でした。そういったこともあったから(教員免許を)取ってくれと言われました」。

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馬場は筑波大のインカレ3連覇に大きく貢献するという結果を出すと同時に、学業も怠ることなく、4年間でしっかり卒業して教員免許も取得した。4年生のシーズンをパスしてBリーグのアルバルク東京に入団したばかりの頃には、教育実習もやっていた。

「筑波に入ったからには(教員免許を)取るつもりでした。筑波の体育(学部)といえば教員免許を取ることが普通なので、何が何でも頑張ろうと思いました。(頑張りは)半端なかったですね。教育実習とアルバルクのアーリーカップがほぼ丸かぶりしていて、プロ選手でありつつ先生もやるというのもありましたし、単位(取得が)がすごく大変でした」。

敏春さんとの約束を守って大学を卒業した馬場は、在学中の2017年にプロになり、アルバルク東京でBリーグ2連覇(2018、2019年)に貢献した。そして昨夏、満を持してNBAへの挑戦をスタートした。

1試合1試合、1日1日が勝負

プロとして着実に前進している現在の馬場にとって、大学卒業と教員免許取得はもう過去のことだ。今、Gリーグでバスケットボールに全力で取り組める環境にいることに幸せに感じながら、NBA選手になるという目標に向かって1日1日を大事に過ごしている。

レジェンズに入ったばかりの今シーズン序盤はなかなか出場機会がなく、“何をしに来たんだろう”とベンチで思うことが何度もあったという。しかし、ハードワークの継続、試行錯誤を繰り返すことによって、少しずつ前進している。

実際、シーズン序盤の11月に平均11.8分だった出場時間は、2月には28.3分に上昇し、先発起用される試合もあった。それでも、「本当に冗談抜きで1試合1試合、1日1日が勝負。正直、足踏みするわけにはいかないです」と語る現在の馬場には、油断も慢心も一切ない。

「言葉の問題はありますけど、それを踏まえて(練習や試合に取り組む)姿勢だったり、より一層結果が求められると思うので、そこにフォーカスしていきたいです。さらにそこから力をつけて、オリンピックに臨みたいなと思っています。今(の自分)は外国人に対して抵抗も何もないですし、日本人だからどうこうというのもないです。だから、その姿勢を前面に出せれば、オリンピックへと自然につながっていくと思うので、結果にフォーカスしていきたいです。ここからの試合は全部、馬場雄大という名前がアメリカで少しずつ知られていくわけですし、見ている人は見ているので、手を抜かずに全試合結果を求めてやっていきたいです」。

プロバスケットボール選手・馬場雄大の原点には、“外国人だからいうことはまったく関係なく、同じ人間だから負けるわけにいかない”という強い気持ちがある。NBA選手になるまでの道のりは依然として険しいものだが、目標を実現して活躍の機会を得たとき、大きな影響を受けた父と立派に育ててくれた母に対する最高のギフトを贈るつもりだ。

「自分がビジネスやファーストクラス(のチケット)なんかを出せるようになって、本当にゆったりと、全部面倒を見てあげて、NBAのコートに立っている姿を見せたいというのが僕の夢。それをモチベーションとしてやっていますし、それがひとつの恩返しかなと思っています」。

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