「我々はマシンではない」ロジャー・フェデラー氏がプロテニスサーキットの過酷さとメンタルヘルスへの影響を懸念、若くして引退した選手たちに理解示す

2022-11-22
読了時間 約2分
Getty Images

今季限りで現役を引退したプロテニス4大大会通算20回優勝、キャリアグランドスラム達成者の元ビッグスリー、ロジャー・フェデラー氏が、競技から離れた立場となってから、自身の肉体を酷使することになったサーキット生活について振り返った。

氏は、フィジカルだけではなくメンタルもすり減らすサーキットの現状について警鐘を鳴らしている。ジョシュア・メイン(Joshua Mayne)記者が伝える。

▶全問正解できたら本物のファン。サッカーにまつわるクイズに挑戦しよう

天才フェデラーが辞めて気づいた心の負担

プロテニスサーキットは過酷なあまり選手たちのメンタルヘルスに悪い影響を与えているとロジャー・フェデラー氏が語った。

史上最高のテニス選手と称されたフェデラー氏は、引退を表明したばかりだ。24年間のキャリアは輝かしい業績に満ちていたが、そのツアー生活がいかに苦しかったをようやく理解できるようになったと述べた。

東京で行われたユニクロのイベントに出席したフェデラー氏は、記者会見の場においてテニス界の過酷な日程と選手が直面する心理的な困難との関連を強調した。

「私たちは強くあることを求められます。しかし、私たちはマシンではありません。私たちは人間なのです」

「とても若いうちに引退する選手たちがいますが、私はその訳をよく理解できます」

「以前からそういうことはありました。私はそれを悲しいことだと思います。なぜなら将来には大きな可能性があったはずだからです」

「ツアーは過酷なのです。移動も練習も時差ぼけもすべて」

「選手たちは弱音を吐くことを許されません。疲れたとも言えないのです。なぜなら人はそれを弱さだと見るからです。選手たちがメンタルヘルスに問題を抱えることがあるのはそのためです」

今年のレイバーカップを最後に現役生活から引退すると発表したあと、フェデラー氏は自らが感じていた大きなストレスから解放されたことに気がついた。

テニス界では、年に4回のグランドスラム大会に加え、ATP(男子プロテニス協会)または WTA(女子テニス協会)はほぼ毎週のようにイベントを開催している。テニス選手のオフシーズンは短く、ランキング争いに追われている。

41歳のフェデラー氏はプロテニスサーキットは終わりなく続くように思われ、そして最終的には犠牲者が出てしまうのだと語った。

Scroll to Continue with Content

「テニス選手はいつも次の練習と次の試合のことを考えています。そこから逃れることはできないのです」

「次の遠征、次の荷造り。私は自分でも気がついていなかったようです。引退して初めて、その考えから離れることができました」

「そしてようやく分かったのです。すべてのストレスが消え去ったことを」

つきまとう薬物検査、元女王もストレスからの解放を選択

遠征と過密な日程に加えて、フェデラー氏はドーピング検査がアスリートのストレスレベルをいかに高めるかについても強調した。

「ドーピング検査用紙を毎日提出しなくてはなりません。毎日1時間かけて、どこにいても、です」

「そのことはいつも頭の中にあります。いつ検査員がやってくるか分からないのです」

フェデラー氏のこうしたコメントを発したのは、元世界ランキング1位のアシュリー・バーティさんが突然引退してからおよそ1年後のことだ。バーティーさんは地元開催の全豪オープンを優勝してからわずか数か月後にテニス界から離れることを発表した。

当時このスポーツの頂点に立っていたにもかかわらず、26歳のバーティーさんは誰もが驚いた引退を決断し、「別の夢をおいかける」ことを選んだ。

バーティーさんはその後もテニス復帰の可能性を否定し続けている。

「私は終えました」とバーティーさんは11月に改めて繰り返した。

「絶対にないとは絶対に言えません。それでも答えはノーです」

「ノー、ノー、ノー。私は(テニス競技者生活を)終えたのです」

原文:'We're not machines': Roger Federer highlights mental health impact of pro tennis circuit, can 'understand' players who retire early
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

▶テニスを観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう