【高校野球】2024年から新基準の低反発バットを導入|理由は?野球はどう変わる?メリット・デメリットなど

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高校野球では2024年春のセンバツ及び春季大会から、新基準のバットが導入される。「低反発バット」とも呼ばれるバットの導入により、どんな影響があるのだろうか。ここではバットの新基準や導入の理由、野球への影響、メリット・デメリットについて紹介する。

金属バットの新基準について

導入の時期

2023年度のシーズンまでは従来のバットと新基準のバットの両方を、公式戦で使用することができる。2023年の秋季大会では併用可能だ。そして翌年、2024年の春のセンバツ(第96回選抜高等学校野球大会)、及び都道府県春季大会からは新基準に完全移行となる。

導入の目的

  1. 打球による負傷自己防止(特に投手)
  2. 投手の負担軽減によるケガ防止(打高投低の是正)

近年は金属バットの性能向上などにより、打球の速度が上がっていた。これによる負傷の防止(特にピッチャーライナー)や、打球速度を抑えることで打高投低に歯止めをかけることなどが期待されている。

導入の経緯・理由

打球速度の上昇によるピッチャーライナーでの負傷のリスクが増え、バットの反発性能を見直す声が上がっていたところ、2019年夏の甲子園大会(第101回全国高等学校野球選手権大会)で岡山学芸館高のピッチャーが打球を顔面に受け、病院へ搬送。骨折の診断を受けた。

この大会後に見直しを決定し、2022年2月に新基準が決まった。

バットはどう変わる?

  1. 最大径が「67mm」から「64mm」に。バットが「細く」なる。
  2. 打球部が「約3mm」から「約4mm以上」に。金属部分が「肉厚」になる。

バットを「細く」「肉厚」にすることでトランポリン効果を減衰させ、反発性能を抑制する。トランポリン効果とは、打撃時に投球とバットが衝突した際に、バットが凹む現象のこと。凹みを抑えることで、バットの反発性能も抑えることができる。バットの重量900gは従来通り変わらない。

朝日新聞社、毎日新聞社の協力のもと、全国の加盟校に新基準バットが2本ずつ配布される。また、従来のバットは2024年夏頃に「金属製バットリサイクル運動」を実施予定。

低反発バット導入による影響は?

打球速度が落ちる

打球速度が落ちることにより、打者にとっては抜けると思った当たりが抜けない、スタンドに入ると思った打球がフェンス手前で失速するということがあるだろう。守備側にとっては、処理できる打球が増える一方、想定よりも打球が弱く、前に出て処理しなければならないことが増えそうだ。

打球音が変わる

これまでの「カーン」という音から「キーン」という甲高い音になる。始めのうちは「音の割には飛ばない」という感覚に囚われそうだ。野手は音に惑わされずに守備をする必要があるが、すぐに慣れるだろう。

メリット・デメリットは?

1番のメリットは、やはりピッチャーライナーによるケガを予防できる確率が高まることだ。打球がピッチャーに到達するまでの時間が長くなれば、それだけ反応の時間が得られるため避けたり、捕球できる可能性が高まる。とは言え想定を超えるような強烈な打球が生まれることもあるため、油断は禁物だ。

また、バットの芯で打たなければ打球が飛ばなくなるため、各打者がより芯で打つ意識が高まることも挙げられる。それにより打者のレベルアップが実現すれば、将来の野球界にとって良い影響だと言える。

デメリットは打球が飛ばなくなることだ。芯で打つ技術を高い精度で身に付けるのは簡単ではないため、育成年代にとっては特に重要な「飛ばす楽しさ」が得られる機会は減ってしまうだろう。

野球はどう変わる?

高校野球ではこれまでもバットの変更により、野球が変わってきた歴史がある。元々は木製バットを使っていた高校野球だが、1974年に金属バットが導入されると、その「飛ばす力」を存分に活かし、筋力トレーニングを取り入れたパワー野球が盛り上がった。

原辰徳を擁する東海大相模高や、「やまびこ打線」で知られる徳島の池田高などが甲子園でも旋風を巻き起こした。

パワー野球が普及し、打球速度や飛距離が上昇するとともに、前述した危険性が指摘されるようになった。そこで高校野球では2001年、金属バットの重さを「900g以上」に変更した。

しかし球児たちはすぐにこれに適応。より筋力をつけることでさらなる打力向上へとつながっていった。それを証明するかのように、2006年夏には歴代最多(当時)となる60本塁打が飛び出した。

今回は、より確実に打球速度・飛距離を下げる方向で基準を変更したため、少なくとも短期的には長打、本塁打が減少するだろう。各チームがそれにどう適応するか。

低反発バットでも長打を生むための技術やパワーを身に付けるのか、それともバントやゴロ打ちなどの小技を身に付けるのかで野球は変わりそうだ。

投手にとっても影響はある。打球が飛ばなくなり、強打者を抑えるための投球が変わってくるだろう。コントロールミスによる致命傷が減るため、投球の精度が落ちることが懸念されている。その一方で、これまでよりも大胆な投球が可能になり、能力も伸びていく可能性もある。一概には言えないが、良い面・悪い面ともにありそうだ。

社会人野球でもあったバットの変更

社会人野球では1978年までは木製バットを使用していたが、1979年から2001年まで金属バットを使い、2022年からは再び木製バットを使用している。

金属バットを使用していた時代の社会人野球は打力優位で、打撃戦により試合時間が長くなったり、コールドゲームが増えることでファンにとっても興味をそがれる要因のひとつになっていたという。一番の理由は国際大会への対応だったが、格差是正というのも大きな理由だった。

低反発バットの導入により来年以降、高校野球でどのような影響があるのか。短期的、長期的にも異なるだろうが、球児たちを見守っていきたい。

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神奈川県出身。中学時代は野球部で選手、高校、大学、社会人クラブチームではマネージャーとして野球に携わる。市役所勤務を経て高校野球専門メディアで企画・編集・執筆・翻訳などを担当。フリーライターとして独立し、『スポーティングニュース』『オリンピックチャンネル』『SPAIA』『高校野球ドットコム』などの媒体にコラムやレポート、SEO記事などを寄稿。オフには草野球を楽しんでいる。
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