那須川天心vs武尊、天才と努力家の頂上決戦|THE MATCH 2022展望/プレビュー

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那須川天心 vs. 武尊
Getty Images/時事

国内キックボクシング団体のRISEとK1による対抗戦『THE MATCH 2022』(6月19日、東京ドーム)で、RISE世界フェザー級王者・那須川天心とK1ワールドGPフェザー級王者の武尊による『世紀の一戦』が行なわれる。18日には前日計量が行なわれ、両者ともに規定内でクリア。明日の決戦を前に約20秒間にわたる視殺戦を繰り広げたが、果たしてどちらが中量級最強となるのか? 決戦への経緯と両者の経歴、そして展望をうらなう。決戦はTVでの生中継はなく、ABEMA PPVで有料配信される。1000万円勝敗予想キャンペーンも紹介する。

ABEMA PPV『THE MATCH 2022』公式ページ

世紀の一戦への道のり

18日13時、都内で『THE MATCH 2022』メインイベントの58キロ契約3分3ラウンド延長1ラウンドで戦う、那須川天心と武尊が前日公開計量に臨んだ。天心は57.95kg、武尊は58kgのリミットピッタリでともにクリアした。計量を終えるや、両者は約20秒間にわたって睨み合い、決戦への緊張感を高めた。

この決戦に至るそもそものキッカケは、2015年の天心による7歳年上の武尊に対してのラブコールだった。天心の所属するRISEと、武尊の所属するK1は当時、ライバル団体というだけでなく、契約体系の問題もあり、選手交流を伴う相互関係も容易に築けない隔たりがあった。後発団体として認知度をあげたいRISEと、重量級外国人主流のかつての体制から脱却し国内中量級で出直しをはかっていたK1の関係性は、長らく平行線をたどってきた。

天心はRIZINとの関係性を強め総合格闘技に挑戦し、RISEでは2階級を制覇。メディアへの露出も増え、2018年大晦日のフロイド・メイウェザーとのエキシビション戦で爆発的に知名度をあげた。武尊はK1とKrushで3階級を制覇、中量級で無数の勝利を築き上げていった。かつてのK1とは違い地上波中継すらない環境ながら、圧倒的な強さを磨いた。

両者の決戦に向けて風向きが変わり始めたのは、2018年12月、K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級タイトルマッチで皇治戦勝利後に武尊が天心戦を実現させたいというニュアンスで発言したことだ。2020年大晦日に天心の試合を武尊が観戦し、リング上で言葉をかわし、今度は2021年3月、天心が武尊の試合を観戦。武尊も対戦を会場でアピールするという流れに発展した。それでもすぐに決定とはいかなかったが、同年12月24日、正式に天心vs武尊が発表された。

天才 vs. 努力家の頂上対決

この決戦に至るまでに、両者ともに国内キックボクシング中量級のスター選手となったが、その歩み方は全く違う。

天心は、父・弘幸さんの教えで5歳から極真空手を学び、スピードと天才肌のセンスでジュニア時代から世界大会で優勝し、その頃からメディアに採り上げられる存在だった。RIZINでのMMA挑戦など多くのスタイルを吸収しつつも勝利を重ね、『神童』と呼ばれるようになった。メイウェザー戦を経てボクシング転向を発表。武尊戦はキック選手としてラストファイトになる。

対する武尊は、少年時代にK1に憧れ、通信制の高校に通いながらキックボクシングをはじめ、自費でタイにわたりムエタイ留学を経験。K1甲子園関西予選2回戦での敗退後、日本キック界のレジェンドのひとりである前田憲作の『チームドラゴン』で基礎からやり直し、2011年にプロデビューを果たす。2012年に唯一の黒星を喫するも、以降現在まで、インファイトの打ち合いで勝ち続け、『ナチュラル・ボーン・クラッシャー』の異名で語られる、K1のカリスマとなった。

スタイル面では、スピードとテクニック、そして、空手特有のアウトレンジからの踏み込みの速さやカウンターを持つ天心に対して、インファイトで長期戦もいとわない泥臭い打ち合いを得意とするパワー勝負の武尊とあって、まさに対照的だ。そういう意味では、3分3ラウンド延長1ラウンドというルールは、武尊にとってはやや不利ともいえるし、フルラウンド判定決着という形に行き着く可能性もある。

また、今回の対戦で一番話題になっているのが、58kgという契約体重だろう。両者が持つタイトルの上限体重が違い、それぞれの団体であれば、天心は57.17kg、武尊は60kgをリミットにして戦っている。普段より増やせば良い天心に対して、3kg近く削らなくてはいけない武尊は減量での負荷が大きい。

前述通り、前日計量では、天心が57.95kg、武尊が58kgでクリアしたが、武尊は水抜き減量で身体に負荷がかかっているところで、計量後の戻し(ても良い体重)も+4kgまでとなっており、19日試合3時間前の計量は心理的にシビアになるだろう。

グローブに関しては、武尊が普段使用している8オンスではなく、6オンスとなっており、パンチの威力は必然的に底上げされる。アウトレンジから刺す天心に有利に働くとされるが、武尊のパンチにもアドバンテージがつくため、インファイトに持ち込めれば話しは変わってくる。

多くの格闘技関係者がメディアや個人のSNSなどでこの決戦の予想を口にしているが、試合を中継するABEMAでも著名格闘家の予想動画を公開している。なかでもK1中量級のレジェンドで、かつて山本KID徳郁さんとの死闘を演じた魔裟斗氏は、その一戦を例に「1ラウンドが鍵」だとした。天心は1ラウンドでのラッシュ次第、武尊がそれを耐えたら慣れでさばけるようになると予想する。

計量後の会見では、武尊は減量について「人生でこれだけキツイことは今後もないと思います」と告白するなど、やはりシビアなコンデションを強いられたことを話したが、対戦する天心については「世界最高レベルのキックボクサー、何をしてくるかわからない」と評し、直感を信じて戦うと宣言した。

天心はこれが運命の試合だと改めて位置づける。この試合を最後にボクシングに転向するだけに「漫画で言う最終回」「ワクワクするのが久しぶり、人生の決着」と表現した。

天心が初回にスピードで刺し切るか、耐えた武尊が削り倒すか…決戦は『ABEMA PPV』で19日、20時から21時半ころに配信される(メインイベントの開始時間は、当日のほかの試合展開などに左右される可能性がある)。

また、ABEMAでは『THE MATCH 2022』全試合の勝敗予想キャンペーンを行なっている。全16試合の勝敗予想をTwitterで投稿し、全試合の結果を当てた場合、抽選で1名に1000万円が贈られる。詳しくは以下のツイートを確認しよう。締め切りは6月19日(日)午前11:59まで。

那須川天心vs武尊 THE MATCH 2022:特別対戦ルール(抜粋)

  • 前日計量58kg契約、当日計量(試合3時間前)4㎏戻しまで許可
  • 3分3R延長1Rで行われ、スリーノックダウン制、ジャッジ評価基準は『ダウン数、相手への与ダメージ、クリーンヒット数、積極性』
  • 5ジャッジ制となり、3名以上が優勢と判断した側を勝者とする。各ラウンド10点法で採点。延長ラウンドの採点のみマスト評価で決裁する
  • 全ラウンド、点数を公開するオープンスコアリング方式
  • ワンキャッチ・ワンアタックが可能。蹴り足をつかんでの瞬間的な攻撃が1発のみ可、頭部をつかんだ場合は膝攻撃のみ
  • グローブはウィニング製、那須川天心vs武尊は6オンスのグローブを使用
  • 試合場となるリングは6.5m四方のものを採用

那須川天心vs武尊 THE MATCH 2022:放送予定と視聴方法

那須川天心vs武尊の世紀の一戦が行なわれる『THE MATCH 2022』の試合中継は、地上波テレビおよびBS/CSテレビでのライブ中継は実施されない。当初、地上波のフジテレビで予定されていた生中継番組は、5月31日に「主催側との契約に至らず放送しないことに決まった」という発表によりキャンセルされた。

そのため事前に発表されていたインターネット動画配信サービス『ABEMA PPV』での有料視聴番組(PPV=Pay Per View)による独占生中継になった。この大会を無料でライブ試聴する方法は存在しない。

ABEMA PPV『THE MATCH 2022』公式ページ

ABEMA PPV:Yogibo presents THE MATCH 2022

  • 配信日時:2022年6月19日(日) 11:00配信開始
  • 配信媒体:ABEMA PPV
  • 見逃し配信:放送終了後から5日間視聴可能
  • 販売期間:5月19日(木) 12:00 〜 6月19日(日) 21:59

ABEMA PPVでの『THE MATCH 2022』配信は、有料となり、複数のチケット種別がある。「一般チケット」と那須川天心、武尊それぞれの「応援チケット」の3種類があり、さらに、ABEMAプレミアム会員であれば、各3種20%割引のお得なチケットが購入できる。

一般チケット

  • 通常会員:5500円/税込(4580コイン)
  • ABEMAプレミアム会員:4400円/税込(3660コイン)
  • 第1試合からメインイベントまで完全生中継(6~8時間予定)
  • 発売まもなく完売した300万円の最前列席からの視点も視聴可能

応援チケット(那須川天心 or 武尊)

  • 通常会員:各7700円/税込(6410コイン)
  • ABEMAプレミアム会員:各6160円/税込(5120コイン)
  • 第1試合からメインイベントまで完全生中継(6~8時間予定)のほか、複数の特別配信あり
  • 発売まもなく完売した300万円の最前列席からの視点も視聴可能
  • 6つのスペシャルコンテンツ

<チケットの購入や応援チケットについての詳しい解説>
那須川天心vs武尊、立ち技中量級最強対決|THE MATCH 2022日程・放送予定・対戦カード

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。