クロフォードvsスペンスの第2戦が行われる意義とは:ファイターの性分と再戦条項の功罪

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Errol Spence Jr. - Terence Crawford
(Ryan Hafey/Premier Boxing Champions)

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7月末にテレンス・クロフォードに一方的に敗れたエロール・スペンス・ジュニアが、あらかじめ対戦契約に含まれていた再戦要求権利を行使すると決めた。

多くのボクシングファンが再戦を疑問視するなか、スペンスがあえてイバラの道を進もうとする、ファイターの性(さが)と再戦条項の功罪について、『The Ring』や『Boxing Scene』など主要専門メディアでの執筆経験を持つアンドレアス・ヘイルが解説する。

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ファンの心配をよそに再戦条項行使を選んだスペンス

大きな注目を集めた7月29日のウェルター級4団体統一王座戦でテレンス・クロフォードは、エロール・スペンス・ジュニアを圧倒した。そして先日、敗れたスペンス側は、あらかじめ対戦契約に含まれていた再戦要求権利を行使すると決めたと報じられた。あの日まで無敗記録を築いてきたはずのスペンスは、プロボクサーとしてのキャリアで初の敗戦を喫した相手とのダイレクトリマッチに挑むことになる。

クロフォードのトレーナーである『ボーマック』ことブライアン・マッキンタイア氏が、専門ウェブメディア『Pro Boxing Fans』とのインタビューで、この再戦について明らかにした。

「クロフォードが昨日テキスト・メッセージを送ってきたのだけど、スペンスが再戦要求権利を行使するそうだ。試合をすることは決まったけど、まだ日程とかの詳しい情報は何も分かっていない」とマッキンタイア氏は話した。

7月29日の試合に関する契約では、敗者はダイレクトリマッチを要求する権利を与えられ、勝者には契約階級の選択権がある。しかしながら、前回の試合が一方的な展開に終わったことから、多くのファンはスペンスがウェルター級(クロフォードへのリベンジ)にこだわらずに別の道を探るべきだと考えている。

それは正しい選択肢だろうか?

たぶん、そうではない。

スペンスはキャリアを通してウェルター級で戦い続け、同級メジャー4団体のうち3つのタイトルを獲得して、ボクシング界が熱望したクロフォードとの統一戦に漕ぎつけた。たしかにその結果はスペンス自身が望んだものではなかったが、それでも尚、パウンド・フォー・パウンドで上位にランクされるボクサーである。唯一の敗北を喫した相手への雪辱を誓うのは至極当然であろう。

スペンスはどうしてもこのチャンスを逃したくなかったのだ。このファイターは、眼の前の復讐の機会をみすみす逃すような性分にはできていない。

フューリー vs. ワイルダー第3戦のような世間の評価を覆す戦いが実現できるか

もちろん、初戦の内容が内容だけに再戦が前回と大きく異なる展開を見せると予想することは難しい。マッキンタイア氏はさらに一方的な試合になるかもしれないと警告している。

「クロフォードは前回と同じようなパフォーマンスを見せるだろう。あるいはもっと良くなるかもしれない。スペンスは再戦要求権利を行使する前によく考えた方がよかった」とマッキンタイア氏は冷静に述べた。

世間一般の関心は第1戦のときに比べると小さくなるだろう。仮にスーパーウェルター級に階級を上げて試合が行われるとしても、前回惨敗したスペンスにチャンスがあると予想する声は少ない。スペンスが前回の試合で深刻なダメージをすでに負っており、ダイレクトリマッチは無謀に過ぎると考える向きもある。

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しかし、ファイターにとって最大の敵はいつも自分自身だ。試合に敗れたときも、相手が自分より強かったとは認められないものだ。第1戦の結果について言い訳をしないとしても、スペンスは再戦が歴史的なミスマッチではないことを(クロフォードに拮抗する実力があることを)証明するために全力を尽くすだろう。

歴史に教訓を求めるなら、かつてWBC世界ヘビー級王者だったデオンテイ・ワイルダーがタイソン・フューリーに敗れたあとで再戦要求権利を行使したことがあった。2020年に『ジプシー・キング』ことフューリーが一方的な7回TKO勝利を収めたあと、やはりワイルダーがすぐにフューリーに再戦を挑むのは大いなる過ちだというネガティブな意見が多かった。それでもファイターの性ゆえか、世間の声に反発するようにして戦いに挑んだ。

その再戦がどのような結果に終わったかを憶えているだろうか。

ワイルダーとフューリーの試合はヘビー級の歴史でも近年稀にみる好試合となった。ワイルダーは大きくスタイルを変え、2度のダウンを奪う大健闘を見せたが、惜しくも11ラウンド目にノックアウトされた。

ワイルダーが望んだ結果ではなかったが、けっして試合前に予想されたようなミスマッチではなかった。圧倒的に不利だと思われていた試合を名勝負に変えたものはワイルダーの自身への信念にほかならない。勝利することはできなかったが、ワイルダーの勇姿は世界中のボクシングファンを魅了した。このキャリア唯一の敗戦を喫した相手にふたたび挑んだ試合がなければ、ワイルダーは現在のような人気を獲得できただろうか。

多分、そうではなかっただろう。

現在のスペンスは(ワイルダーと)同じチャンスを目の前にしているのだ。

ダイレクトリマッチ条項の功罪

契約上義務付けられたダイレクトリマッチ条項は、勝者の勢いを弱める可能性があるという意味で、欠陥のある概念と言える。なぜなら、勝者はより大きな、より良い方向に進むのではなく、同じ戦いに閉じ込められてしまうからだ。

前述のフューリー vs. ワイルダー第3戦は、少なくともフューリーにとっては前向きなものではなかった。第3戦自体は、2020年7月実施で内定していたが、コロナ禍とフューリーのケガにより延期となり、うやむやになっていた。2021年5月、WBC王者フューリーが、当時3団体統一王者だったアンソニー・ジョシュアとの4団体統一戦を発表すると、後日ワイルダーが第3戦の契約が有効かを巡る仲裁裁判を起こした。結果それが認められ、第3戦が実現した経緯がある。

ワイルダーにとっては意義のある敗北で決着がついたが、フューリーにとっては主要4団体時代初のヘビー級アンディスピューテッド王者になる機会が失われた。ジョシュアはフューリー戦が流れたことでオレクサンドル・ウシクと対戦するも敗戦し、3団体統一王座から陥落。その後、フューリーは現3団体王者ウシクとの4団体統一戦の交渉を続けているが、未だに実現に至っていない。

クロフォードにしてみれば、じきにスーパーミドル級4団体統一戦を行う(9月30日)カネロ・アルバレス(Sミドル級アンディスピューテッド王者)とジャーメル・チャーロ(スーパーウェルター級アンディスピューテッド王者)の勝者との対戦を目指したいはずだ。つまり、フューリーがそうであったように、スペンスとの再戦はその時期を遠ざけてしまう。

しかし、だからと言って、スペンスに再戦を挑まないようにと頼むわけにはいかない。スペンスは紛れもないファイターであり、それ以外に自分が行くべき道を知らないのだから。

※本記事は国際版記事を翻訳後、日本向けの情報などを加えた編集記事となる。原文:Andreas Hale、翻訳:角谷剛、編集:スポーティングニュース日本版編集部 神宮泰暁

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Andreas Hale is the senior editor for combat sports at The Sporting News. Formerly at DAZN, Hale has written for various combat sports outlets, including The Ring, Sherdog, Boxing Scene, FIGHT, Champions and others.
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