類まれなKO率を持つ井上尚弥と各階級ノックアウト・アーチストたちを比較|TSN選出ハードパンチャー・ランキング

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Naoya Inoue demolished Nonito Donaire in two rounds

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7月25日(火)、24勝0敗21KO勝ちの戦績を持つ井上尚弥が4階級目の世界王座に挑む。『ザ・モンスター』の階級を超えたパワーはつとに有名だが、はたしてそれは現代ボクシング界最強なのか?

スポーティングニュース選出の2023年度ハードパンチャー・ランキングを、名門誌『The Ring』や『Boxing Scene』など主要専門メディアでの執筆経験を持つ本誌シニア記者アンドレアス・ヘイルが紹介する。

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現代のノックアウト・アーチストのなかで井上尚弥は何位か

井上尚弥が4階級目の世界王座を目指し、7月25日の東京・有明アリーナで、WBC及びWBO世界スーパーバンタム王者のスティーブン・フルトンと対戦する。

井上のこれまでの戦績は24勝0敗、そのうちの21試合がノックアウトによるものだ。世界主要4団体時代になってから初めて、バンタム級においてすべての団体タイトルホルダーをKOした脅威のアンディスピューテッド王者でもある。

だが、今回の井上の相手は未だにダウンしたことがない『Cool Boy Steph』(クールボーイ・ステフ)である。フルトンはナチュラルな体格のスーパーバンタム級で、21勝0敗の戦績を持つ。判定に持ち込む長期戦はお手の物だ。

『ザ・モンスター』こと井上は、それでも「ファンの度肝を抜かせる」という戦前の言葉からもノックアウト決着を狙っているのは確かだろう。

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さて、プロボクシングではパンチの威力はいつでも大きな意味を持つ。

ファイターたちにとってそれはジャッジに良い印象を与え、試合を有利に進めるチャンスを広げる。プロモーターたちにとっては、それは売り物になる。そしてファンたちにとっては、かのジャック・デンプシー、エデル・ジョフレ、モハメド・アリ、マイク・タイソンのような「ノックアウト・アーチスト」ほど興奮を与えてくれる存在はない。

それでいてノックアウト・アーチストとは強打を振り回すだけのボクサーではない。パワー以外にも次のような資質が必要である。

  • パンチを打つためのポジショニングの上手さ
  • 多彩な攻撃オプション
  • 相手がダメージを負ったときのフィニッシュ(トドメの刺し方)の上手さ

この分野で「最高のファイターはだれか」を決めるのは難しい。KO率の数字だけで測れる訳でもなく、人によって意見は常に様々だからだ。スポーティングニュースが選ぶ2023年夏時点でのノックアウト・アーチストのトップ5は以下の通りだ。

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No.5:ゲンナジー・ゴロフキン (42勝2敗1分け / 37KO / KO率82.22%)

もしこのリストを作成したのが数年前だったら、ゴロフキンはトップかそれに近い順位にいただろう。しかし『GGG』(トリプルG)ことゴロフキンも41歳になり、その実力は全盛期に比べて明らかに落ちてきている。それでもボクシング界において大きな存在であり続けていることは確かだ。現在はミドル級を主戦場にする。

ゴロフキンは現役ボクサーのだれよりも多くの対戦相手を世界タイトル戦でノックアウトしてきた。このカザフスタン人ボクサーは、抗し難いパンチ力と完璧なテクニックを兼ね備えている。そして最も重要な資質として、タイミングを掴む能力が非常に優れている。

対戦相手のこめかみを襲う左フックがゴロフキンの得意な武器だ。ジャブの威力も大きい。どのパンチもクリーンヒットすれば、相手に深刻なダメージを与える。

No.4:ジャーボンテイ・デイビス (29勝0敗 / 27KO / KO率93.1%)

デイビスはスーパーフェザー級からスーパーライト級までの階級でいくつもの世界タイトルを獲得してきた。そのなかには正当なものと、(しばしば計量時に体重超過を起こすことから)そうでないものが混じってはいるが、『タンク』(戦車)ことデイビスが現在のボクシング界において屈指のファイターであることは間違いない。

サウスポーの構えから繰り出す左パンチは殺人的な威力を持つ。そしてパワフルな右のフックは非常に速く、有効だ。このメリーランド州ボルチモア出身ボクサーはボディへの攻撃も上手い。すべての攻撃がスピーディーかつ鋭い。

4月、人気者のライアン・ガルシアがデイビスと激しい打ち合いの末に7ラウンドKO負けの餌食となった。デイビスにとって最初のスーパーファイトだったが、これが最後の大物対決にはならないだろう。プライベートでのトラブルが多く、つねにゴシップにまみれた経歴に難はあるが、ライト級4団体統一王者デビン・ヘイニーという本命との頂上決戦に期待がかかる。

No.3:アルツール・ベテルビエフ (19勝0敗 / 19KO / KO率100%)

ベテルビエフはアマチュア時代に数々の勲章を得て、プロ転向後も順調にキャリアを積み上げてきた。このロシア人ノックアウト・アーチストはこれまでに対戦したすべての有力若手ボクサー、挑戦者、そして王者をノックアウトし、完全無欠の戦績を残している。現在はライトヘビー級の統一王者である。

オーソドックスのベテルビエフは左右どちらからも強力なパンチを放つ。そしてラッシュ攻撃の猛烈さはボクシング界屈指だ。完璧に近い基本能力が類まれなパワーを支えている。19KOのうち14試合を7ラウンド以前で終わらせている。

38歳のベテルビエフは、直近の試合でアンソニー・ヤードから8ラウンドKO勝利を収めた。8月に予定されている次戦では英国のスター、カラム・スミスと対戦する。

No.2:デオンテイ・ワイルダー (43勝2敗1分け / 42KO / KO率91.3%)

この元ヘビー級王者はひょっとしたら単発のパンチの威力ではボクシング史上最強かもしれない。「ブロンズ・ボンバー」(赤銅の爆撃機)ことワイルダーの右パンチを浴びて立っていられるボクサーはいない。タイソン・フューリーという名前だけがその例外だ。

ワイルダーのポジショニングの上手さは見落とされがちである。ただ力任せにパンチを振り回しているわけではない。そんな安易な手段はプロボクシングのリングでは通用しないからだ。その点、このアラバマ出身スターはまるで茂みに隠れた虎のように忍耐強くチャンスを窺い、そしてフットワークを駆使して殺人的なパンチを放つ。

37歳のワイルダーは、これまで対戦したボクサーをことごとくマットに沈めてきた。敗れた相手は「ジプシーキング」ことフューリーのみだ。ワイルダーの研ぎ澄まされたパワーにはただ驚嘆するしかない。

No.1:井上尚弥 (24勝0敗 / 21KO / KO率87.5%)

井上はスピード、パワー、テクニックを完璧な形で兼ね備えたノックアウト・アーチストだ。ハイライト動画を見れば分かるだろう。井上は左フック、右ストレート、そしてボディパンチで対戦相手を倒している。なんとか単発のパンチを防いだとしても、この3階級世界王者には計り知れない威力を持つコンビネーション攻撃がある。

『ザ・モンスター』の異名で知られるこの日本人スターは、2014年から世界レベルの対戦相手から次々とノックアウト勝ちを収めてきた。ワイルダーより攻撃の多彩さで優り、ベテルビエフより爆発的であり、デイビスより経歴が良く、そしてゴロフキンより巧みだ。

もし30歳の井上がフルトンに初のノックアウト負けという屈辱を与えたら、井上のノックアウト・アーチストとしての名声はさらに大きなものになるだろう。

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原文:Where Naoya Inoue's impressive KO rate & record places him among boxing's best punchers in 2023 /Text by Andreas Hale
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮

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Andreas Hale is the senior editor for combat sports at The Sporting News. Formerly at DAZN, Hale has written for various combat sports outlets, including The Ring, Sherdog, Boxing Scene, FIGHT, Champions and others.
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