タイソン・フューリー vs. フランシス・ガヌー:ヘビー級ボクシングまさかのスーパーファイトが実現する理由

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Tyson Fury - Francis Ngannou
(GETTY/ZUFFA LLC/Sporting News)

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ついに10月28日サウジ決戦が確定したタイソン・フューリー とフランシス・ガヌー。ボクシングとMMAという異なる道を歩んできた両者が交錯することは運命的であると言えなくもない。

その因縁は2022年4月の一夜にまで遡る……本誌格闘技エキスパートのダニエル・ヤノフスキーが解説する。

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本流ではない異色のメガマッチが実現

円7月11日、格闘技界に激震が走った。かつてのボクシング統一王者であり、現在もWBC世界ヘビー級王者であるタイソン・フューリー(英国)が、元UFCヘビー級王者のフランシス・ガヌー(カメルーン)と10月28日に対戦することが正式発表されたのだ。

試合は「公式なプロ・ボクシングのルール」で行われるとされ、会場はサウジアラビアのリヤドになる。クイーンズベリー・プロモーション社、Top Rank社、そしてガヌーが契約するGIMIKファイト・プロモーション社が合同で開催する。WBCタイトル戦になるかどうかは未定である。

この異色の対決は両ファイターにとって絶妙なタイミングだ。

フューリーは、2022年12月以来タイトル防衛戦(対デレック・チゾラ)を行っていない。その間にボクシング界のトップファイター何人かとの対戦を画策してきた。

長らく対戦が期待されている元ヘビー級統一王者のアンソニー・ジョシュアとの交渉は、フューリー自身の取引戦術が裏目に出て暗礁に乗り上げた。現WBAスーパー、IBF、WBO、そして名門誌『The Ring』(リングマガジン)認定ヘビー級王者のオレクサンドル・ウシクとの4団体統一戦についても同じことが言える。

一方のガヌーはUFC離脱後、プロフェッショナル・ファイターズ・リーグ(以下、PFL)との契約を締結したばかりだ。ガヌーはYouTuberボクサーとして注目を集めるジェイク・ポールが設立した「スーパーファイト」部門に参入した。ブランド・アンバサダーの肩書も与えられ、ボクシングルールで試合をすることも許されている。2024年のどこかの時点でPFLのケージに登場する予定だ。

それぞれの理由を抱えた両者だが、互いの道が交錯することは運命的であると言えなくもない。その因縁は2022年4月の一夜にまで遡る。

なぜタイソン・フューリーとガヌーは戦うのか

この試合は「地球上で最もワルイ奴」を決める戦いであると喧伝されている。しかし、それだけではない。ほかにも多くのことが絡んでいる。カネ(金)もそのひとつだ。

ガヌーは22歳のときにボクシングのトレーニングを始めたが、26歳のときにフランスで『MMAファクトリー』とフェルナンド・ロペス氏に出会ったことから、総合格闘技スターへの道を歩き始めた。総合格闘技での戦績は17勝3敗、そのうち12勝がノックアウトによるものだ。それでもボクシングで試合をする希望は持ち続けていた。

2022年4月にフューリーがディリアン・ホワイト戦で引退を発表したとき、ガヌーはUFCヘビー級王座についており、両者とも対戦に前向きだった。ガヌーがフューリーの試合終了後にリングに上り、両者はにらみ合いを演じた。マイク・タイソンも巻き込んで、総合格闘技ルールでの試合までも示唆された。もっとも、UFCのダナ(デイナ)・ホワイト社長はこの交渉に関与していなかった。そしてガヌーのUFCとの新契約交渉も物別れに終わった。

ガヌーはUFC選手の健康保険加入や契約交渉の際の弁護士同席など多くの要求を出した。それらの要求は拒否され、ガヌーはPFLと契約することを選んだ。PFLはスポーツ専門局『ESPN』が放映権を持っている。フューリーがメインで契約するTop Rank社も同様だ。どの試合にも100万ドル(約1億4000万円)単位のファイトマネーが約束され、ボクシングルールでの試合に関する独占放映権が含まれている。

「私は3年以上の間、タイソン(フューリー)とリングで相まみえることチャンスを待っていました。私の夢はいつもボクシングで最高の相手と戦うことでした。MMAのヘビー級王者にはもうなりました。今度のこと(フューリー戦)は自分の夢を叶えるチャンスなのです。『地球上でもっともワルイ奴』(The Baddest Man on the Planet)という今の称号も守りたいですね。このイベントを実現してくれたリヤド・シーズン社と私の3Point0 Labsチームに感謝します。タイソンに言いたいことはひとつだけです。リングに上がったらすぐにダンスをした方がいいですよ、とね。なぜなら私のパンチが当たった途端、彼はマットに沈むことになるからです」とガヌーは声明で述べた。

フューリーにとっては、この試合はウシクとジョシュア以外に対戦を噂されたファイターたちの長いリストを否定することになる。『ジプシー・キング』(フューリーの通り名)は大金を稼げる試合を探し続けてきた。この試合ではUFCファイターたちと比べて「10~50倍」にも及ぶファイトマネーを稼げるとも広言している。ウラジミール・クリチコとディリアン・ホワイトに勝利したフューリーは伝説を築いてきた。格闘技界きってのノックアウト・アーチストと考えられているガヌーに勝利すれば、その伝説に新たな1ページが加わることになる。

参考までに、ガヌーがUFCでのラストマッチでシリル・ガーヌに勝利してヘビー級王座を防衛した際のファイトマネーはわずか60万ドル(約8400万円)ほどだった。対して、フューリーの直近の試合は昨年12月のデレック・チゾラ戦だが、その際に保証されたファイトマネーは2500万ドル(約35億円)である。

「ゴングが鳴ったら、それが戦争の始まりだ。ガヌーは世界で一番のハード・パンチャーかもしれない。だけど、ジプシー・キングのパンチに耐えられるかどうか見てみようじゃないか。俺はリングに戻るのが楽しみでならない。ほかのジャンルの王者との試合を通して、このジプシー・キングこそが現代最強のファイターであることを世界に証明したい」とフューリーは豪語。そして繰り返すように地球最強になることを宣言する。

「フランシス(ガヌー)がホワイト戦の後でリングに上ってきたとき、とても強そうな男だと感じた。しかし、俺より強い人間はこの世に存在しない。10月28日はそのことをはっきりと知ってもらえるはずだ。この素晴らしいイベントを実現してくれた、私のプロモーターであるフランク・ウォーレンとボブ・アラム、マネージャーのスペンサー・ブラウン、そしてリヤド・シーズン社の皆に感謝したい。これは歴史的な試合になる。楽しみにしてくれ」

この試合によってウシク戦は遠のいた。ウシクは8月26日にダニエル・デュボアを相手にタイトル防衛戦を戦う。ガヌー戦の結果にもよるが、フューリーが年末までにウシク対デュボア戦の勝者と対戦する可能性はある。

※当記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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Daniel Yanofsky is a combat sports editor at The Sporting News.
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