ベン・シモンズが3年連続でオールスターに選出され、年間最優秀守備選手賞の投票で2位となり、バスケットボール界有数の新たなスターと考えられていたのは、わずか3シーズン前のことだ。
以降のシモンズの苦戦ぶりはよく知られている。昨季はケガに泣かされたが、本人は完全に調子を取り戻したと話した。ブルックリン・ネッツのジャック・ボーン・ヘッドコーチも、『SNY』のイアン・ベグリー記者に、シモンズは100%健康で、5on5の練習復帰が認められたと明かしている。
シモンズ復帰はネッツに複雑な問題を課すことになる。彼を生かす最善の方法は何かということだ。昨季は本人の自己最低の数字もあり、彼にとって良い役割を真に見いだすことができなかった。
今のところ、シモンズをスターティングラインナップに含めるプランのようだ。だが、ベンチスタートのほうが良いアイディアかもしれない。その理由をここで分析する。
ベン・シモンズはベンチスタートでよりスキルに合ったラインナップとプレイ可能
シモンズは、コーチがどんな状況にも当てはめられるタイプの選手ではない。シモンズがベストを発揮するには、いくつか非常に特殊な状況が必要となるのだ。ジョエル・エンビードと組んで、ボールを持たないでプレイした時は苦戦した。だが、フィラデルフィア・76ersが彼にボールを預け、周囲に4人のシューターをそろえた時は活躍している。
シモンズにとって悪い知らせは、ネッツで先発出場すれば、再び周囲のシューターが限られるということだ。ネッツの予想スタメンには、ミケル・ブリッジズにキャメロン・ジョンソンと2人の優れたシューターたちがいる。だが、あとは3ポイントショット成功率が通算33.3%で昨季はネッツで28.9%にとどまったスペンサー・ディンウィディーと、完全にシューターではないニック・クラクストンだ。
クラクストンをスターティングラインナップから外し、別のシューターを起用するのも、素晴らしい選択ではない。ベグリー記者によれば、ボーンHCはクラクストンとシモンズを一緒にプレイさせる意向だ。そうでなかったとしても、ネッツのロスターにフロアを広げるショットを持つセンターはいない。
シモンズのベストポジションであるポイントガードでプレイする時間も、スターターとしては制限される。ベグリー記者によると、主なボールハンドラーとなる役割を、シモンズ、ディンウィディー、デニス・スミスJr.で分担するのがボーンHCの計画だ。ディンウィディーは26試合で平均9.1アシストと、昨季のネッツで優れたファシリエーターとなっていた。その彼がボールを持てば、シモンズは76ersで抱えたのと同じ問題に直面することとなる。
シモンズをベンチスタートにすれば、すぐにこれらの問題は軽減される。ネッツにはブリッジズやジョンソン、ロイス・オニール、ドリアン・フィニー・スミスと、シモンズと一緒にプレイできる3&D(3Pと守備を得意とする選手)のウィングが多いからだ。彼ら4人とシモンズがプレイするなら、スイッチ可能なラインナップとなり、シモンズの周囲の選手がショットを打てるようになる。
ネッツのロスターの問題はベン・シモンズがベンチスタートすれば修正可能
それらのウィング全員の出場時間を見つけることが、ネッツの最大の問題となるだろう。
シモンズによってスターティングラインナップから外されるのは、フィニー・スミスだろう。リーグ有数のウィングで、大半のチームで先発出場してきた選手だ。シモンズをベンチスタートにすれば、そのフィニー・スミスを慣れた先発の役割で活躍させられる。
また、ネッツはセンターの層がリーグで最も薄い。クラクストンは堅実なスターターで、年間最優秀守備選手の大穴だ。しかし、彼の後ろに控えるのは、デイロン・シャープ、ノア・クラウニーという実績のない2人だ。
つまり、ネッツはクラクストンがコートにいない時に、シモンズができるだけ相手のセンターを守ることが必要になるだろう。シモンズをベンチスタートにし、彼の周囲にサイズとショットのある選手を置けば、シモンズはポイントセンターの役割でプレイできる。非常にアンバランスなロスターにとって、数少ない修正方法だ。
ベンチスタートはベン・シモンズのプレッシャーを緩和
シモンズはメンタルヘルスの問題に直面したことについてオープンにしてきた。『The Sydney Morning Herald』に、76ers時代の終わりには「本当に暗い場所に入った」と明かしている。『The Athletic』のシャムズ・シャラニア記者は昨年、シモンズのメンタルヘルスがストレスを生み、腰の問題の引き金となったかもしれないと伝えた。
それらの精神的な問題が、シモンズを制限している最大の要因かもしれない。ドレイモンド・グリーンによれば、シモンズはずっと同じ選手のままという。唯一の例外が、自信だ。対戦相手のスター選手たちが休んでいる間にシモンズに活躍させるのは、少なくとも彼がその自信を取り戻すまで、良いアイディアとなるかもしれない。
シモンズはリーグ最高のシックスマンのひとりになるかもしれない。必ずしも永続的とは限らないが、本人にとってもチームにとっても、価値のある実験となるだろう。
原文:If Nets want Ben Simmons to thrive, they should take him out of starting lineup, bring him off bench(抄訳)