[杉浦大介コラム第93回]NBAドラフト2019: 注目の八村塁は何位でどこに指名されるのか?

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八村塁 Rui Hachimura

アメリカ国内ではとにかくデューク大学のザイオン・ウィリアムソンの動向一色になりそうな2019年のNBAドラフトだが、日本のファンにとって気になるのはやはりゴンザガ大からアーリーエントリーを表明した八村塁の行方に違いない。

5月14日(日本時間15日)にシカゴで行なわれたドラフトロッタリーで、6月20日(同21日)に開催されるドラフトでの各チームの指名順が決まった。今後、どのチームが誰を指名するかという予想もより具体的になる。1巡目指名が有力とされる八村を獲得する可能性が高いチームはどこなのか?

一般的に今年はウィリアムソン、同じくデューク大のRJ・バレット、マレー・ステイト大のジャ・モラントが“ビッグ3”と見なされており、なかでも“いの一番”の指名権を手に入れたニューオーリンズ・ペリカンズは順当にウィリアムソンを指名することが確実視されている。その後、全体2位指名権を得たメンフィス・グリズリーズ、同3位指名権を持つニューヨーク・ニックスがモラントかバレットのいずれかを指名することになると見られている。

この後の順位は予想が難しく、主要媒体がこぞって発表しているモック・ドラフト(Mock Draft)でもばらつきが目立つ。八村もいわゆる“第二グループ(あるいはそれ以下)”に含まれると見るのが妥当だが、順位予想は容易ではない。

『NBADraft.net』のように八村が全体4位で指名されると見るメディアもあれば、20位台後半に据えている媒体もある。筆者が直接知っている関係者、代理人などの言葉を総合すると、どうやら「全体10~20位の間」の指名に落ち着くと見ている者が最も多いようである。今回のロッタリー後、『ESPN.com』、『SI.com』、『The Athletic』といった大手媒体がすぐにドラフト予想を発表したが、そのランキングを見ても、八村の名前はやはり10〜20位の間に含まれていた。

八村塁 Rui Hachimura

主要バスケットボールメディアのドラフト予想

ESPN.com

全体18位

インディアナ・ペイサーズ

寸評の概要: ペイサーズのローテーション選手の多くは今夏にFAになるだけに、ドラフトではポジションにかかわらず、残っている中で最高の選手を指名するだろう。八村はフィジカルのツールと身体能力に恵まれている。ペイサーズが重きを置く(精神的な)性質と練習熱心さも備えている。フォワードの両ポジションをプレイできることも魅力となるはずだ。

SI.com

全体16位

オーランド・マジック

寸評の概要: 八村はドラフト・コンバインに参加しなかったことで人々を驚かせた。スカウト陣の中でもその真価への意見は分かれている。長期的に見たときの伸びしろ、NBAで通用する体躯、速攻時の能力には魅了される。一方、プレイや試合の流れを感じ取る能力の不足、ボールを独占してしまうことが(欠点として)語られてきた。カレッジ時代と同じようにボールを持つ機会を得るためには、スキル、ジャンパーを向上させる必要がある。マジックはその伸びしろにかけることを好むだろう。
※SI.comはその後、5/20付のモック・ドラフトを公開し八村を11位にランクアップさせ、ミネソタ・ティンバーウルブズに指名されると記している。

The Atletic

全体12位

シャーロット・ホーネッツ

寸評の概要: ホーネッツが八村を指名するとすれば、得点力に大きな伸びしろがある選手への賭けになる。現状のロスター(の限界)とケンバ・ウォーカーがチームを去る可能性を考えれば、それはチームにとって必要な賭けでもある。カレッジ時代に目立った成功を収めた選手(ウォーカー、フランク・カミンスキー、マイルズ・ブリッジズ、マリーク・モンク、コディ・ゼラーなど)を好んで獲得してきたチームの方向性に、八村はフィットする。


もちろんこれらはあくまで一部の識者の意見と推測であり、参考程度にとどめるべきではある。ドラフトまでに様々なことが起こりえるし、当日のトレードの可能性もある。特に10位以降の指名順を予想することは極めて難しい。それでも主要媒体の寸評から、八村の立ち位置がわかりやすい形で見えてくるようでもある。

八村に対する評価をまとめると、「そのポテンシャルには例外なく大きな期待が寄せられ、魅力的な素材と考えられているものの、スター街道が約束されたいわゆる“安全な選択肢”とまでは認識されていない」といったところだろうか。そんな存在だからこそ、ドラフト当日にどんな結果が出るかになおさら興味をひかれる、という側面もあるのだろう。

ロッタリーが終わり、本番へのカウントダウンはすでに始まっている。日本バスケットボール界が生んだ逸材の行方から、今後しばらくは目を離すべきではない。

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。
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