デニス・シュルーダー: 負けずぎらいで、仲間想いで、家族を大切にする男

Dennis Schröder Thunder NBA

「彼が先発ガードになれることは誰もが知っている」

2年前、デニス・シュルーダーがオクラホマシティに来たばかりの頃、彼はベンチプレイヤーの役割に改めて慣れようとしていた。その前のアトランタ・ホークスでの2年は、1試合を除く全ての試合にスターターで出場し、スターターのときは1試合平均17.9得点、ベンチスタートのときは19.4得点をあげていた。

オクラホマシティ・サンダーにトレードされてから、ビリー・ドノバン・ヘッドコーチはシュルーダーをスーパーサブとして出場させるようになった。彼にとって移行期となった2018-19シーズンには、平均29.3分の出場時間で、5.5得点、4.1アシストをあげ、79試合のうち14試合をスターターでプレイしている。

翌2019-20シーズンには、キャリアベストとなるフィールドゴール成功率46.8%、19得点、キャリアハイの3ポイントショット成功率38.1%という見事なパフォーマンスを63試合にわたって見せた。スターターのような数字を出したシュルーダーだが、このシーズン、彼がスターターを務めたのはたった1試合だった。

「このリーグではどこのチームでも彼がスターティングガードになれることは誰もが知っている」と、ドノバンHCは言う。

控えとしてベンチ出場する現状に、不満を抱いて態度を荒げたり、自分にはスターターのチャンスがないのだと捉えたりせず、シュルーダーはただ目の前にある今の状況を活かすことに焦点を当ててきた。

「デニスのことでいつも感心するのは、彼が常にチームの競争心を掻き立てることだと思っている」と、ドノバンHCは話す。

「8月に試合が再開したら、彼は間違いなく同じようにやってくれると思う」。

常に感じられる存在感

試合に出ていないときのシュルーダーは、実は滅多にベンチで座っていることがない。彼は通常、ドノバンHCの少し後ろで立っているか、熱狂的に行ったり来たりしている。コートの上にはいなくても、そこには彼の存在が感じられる。チームメイトに話しかけたり、次に来る相手チームのプレイコールを警告したり、ポジティブな応援の言葉をかけたり、チェサピーク・エナジー・アリーナの観客を扇動するかように自ら声を上げて盛り上げたりしているのだ。

だが、オーランドでのシーズン再開においては、シュルーダーのその盛り上げに力を貸してくれるシックスマンのような存在はそこにない。

「サンダーファンはリーグ最高のファンで、毎試合僕たちのことを素晴らしい応援でサポートしてくれる。だから、ここにファンがいてくれたらって思うのは間違いないね」と、シュルーダーは言う。

Dennis Schröder Thunder NBA

しかしチームメイトによれば、今シーズン、シックスマンの役割をリーグの誰よりもこなしているのはシュルーダーだ。

「デニスのことで言えるのは良いことだけだよ。それも数えきれないくらいある」と話すのは、NBAでも様々なガードとプレイした経験のあるベテランフォワードのダニーロ・ガリナーリだ。

「第一に、彼はあり得ないくらいの才能の持ち主だ。身体的には、コート上でもウェイトルームでさえも、必ずしも多くの人ができるわけじゃないことがいろいろできる。コートではとても利他的で、彼がシックスマン・オブ・ザ・イヤーなのは間違いないと思っているよ」。

今シーズン序盤にシックスマン賞について聞かれたとき、「自分のことについて話すのはあまり好きじゃないんだ」と、シュルーダーは言葉を濁した。

「僕はただ試合に出てチームを助けようとしてるだけで、それはリーグが決めること。僕らは共通認識を持っているんだ。みんなが犠牲になってチームメイトのためにプレイを作るのさ」。

圧倒的に厄介なディフェンダー

シュルーダーのオフェンスにおける新たな変化は、ミッドレンジでのオフ・ザ・ドリブルからのシュート力と、リム周りでの確かなフィニッシュ力に加え、3Pの急激な伸びに見られる。

彼のシュートは、コーナースリーはリーグ平均を超え(左サイド52%、右サイド50%)、コーナー以外の右ウィングは40.2%で、リーグ平均を5%上回っている。他のチームにスリーを押さえ込まれたときには、ミットレンジからのプルアップジャンパーと、ゴールに切り込む猛烈なスピードで、シュルーダーはディフェンスを崩してきた。

しかし今シーズン、シュルーダーがおそらくこれまでのキャリアにない数字を叩き出しているのは、実はディフェンスのほうだ。94フィート(約28メートル)のコートの端から端まで粘り強いディフェンスを繰り広げ、エリートスコアラーのディフェンスを引き受けて、6フィート1インチ(約185cm)のサイズで自分よりも4~5インチ(約10~13cm)も背の高い選手に身体を張って立ち向かうシュルーダーは、圧倒的に厄介なディフェンダーとなっている。

「彼は今、2ウェイプレイヤー(攻守両面で優れた選手)としてリーグ最高の選手の一人だよ。フルコートプレスができる唯一の選手だ。それをやっている選手をほかに見たことがないね」と、ガリナーリは言う。

Dennis Schröder Thunder NBA

「彼はゲーム中、とにかく集中しているよ」と話すのは、2013年にホークスで共にルーキーシーズンを過ごして以来、シュルーダーとはチームメイトであり友人でもあるマイク・マスカーラだ。

「それが彼をあんなに素晴らしい選手にしているんだと思う。彼は目の前のポゼッションひとつひとつに向き合っている。試合全体を通して見てみると、彼がどのプレイにも集中しているのがわかると思う。試合全体を通して、シーズン全体を通して、その効果は絶大だよ」。

いつでも家族が第一

サンダーファンがほかにも知っていることのひとつは、シュルーダーが、夫、そして父親としての役割にも同等にコミットし、集中していることだ。彼の息子のデニスJr.と妻のエレンは、試合前やハーフタイム中のキスのため、試合開始前のコートサイドやチェサピーク・エナジー・アリーナのトンネルにいるのを良く目撃されている。

8月初旬には、シュルーダー家族に2人目の子供が生まれる予定だ。それはつまり、デニスの気持ちが同時に2つの場所にあるということでもある。

「チームメイトが大好きだし、バスケットボールを愛しているけど、でもやっぱりいつでも家族が第一なんだ」と、シュルーダーは言う。

「妻を独りにするわけにはいかないよ。ジュニアはまだ生後17ヶ月だし、僕は必ず彼女のそばでサポートして、家族のためにできる限りのことをしようと思っている」。

シュルーダーは、家族のそばにいるために一度オーランドの“バブル”(隔離施設)を出て、再びオーランドに戻って来る予定だ。一時的にコートからベンチに下がるときとは違い、彼は完全に現場から離れることになる。そのため、再びコートでサンダーファミリーに合流する前に、NBAが定める10日間の隔離が必須となる。

しかし、シュルーダーが再び戻ったそのときには、彼に戦いの準備ができていることを、チームメイトはみんな知っている。

原文: Dennis Schröder: Competitor, Teammate, Family Man by Nick Gallo/OKCThunder.com
翻訳: YOKO B Twitter: @yoko_okc


NBA公式動画をチェック!

LATEST VIDEOS