富永啓生スカウティングレポート:『和製ステフィン・カリー』にNBAの可能性はあるのか?

Keisei Tominaga / University of Nebraska
(YOKO B)

ネブラスカ大学の富永啓生は、インディアナ・ペイサーズとのワークアウトで今後努力すべき点を確認した後、ネブラスカ大で4年生としてのシーズンを迎える決断をし、NBAドラフトのエントリーを取り下げた

『和製ステフ・カリー』として知られる富永は、すでにNBAで通用するスキルを持っている。しかし、大学を去っていたら、おそらくドラフトされることはなかっただろう。大学へ戻ることで、自分のゲームを向上させ、競合のはるかに少ない2024年のドラフトクラスに入る機会が巡ってくるのだ。

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富永が2024年の夏にドラフトされる可能性はあるのだろうか? 今回は、彼がNBAチームに注目される理由と、来年のドラフトで指名されるために改善すべき点について説明する。

富永啓生はすでにNBAレベルの3ポイントシューターである

富永には、明日からNBAの試合に出場し、3ポイントシューターとしてリーグで優れた選手の1人になる可能性がある。彼はペイサーズのワークアウトで、練習中に25本中20本以上の3Pを決めた選手に与えられる、伝統のベルを鳴らすことができたのだ。

昨シーズン、ネブラスカ大の3年生だった富永は、3Pを40%の確率で成功させた。彼のショットの多くはすでにNBAスタイルの動きやセットから生まれているので、すぐにNBAで通用するはずだ。これは、ネブラスカ大で富永を指導している元NBAコーチでもあるフレッド・ホイバーグによるところが大きい。

ズームアクションは、NBAの全チームが実行する極めて一般的なセットだ。ボールをキャッチする前に、2つのスクリーンを使って抜け出す必要がある。富永はすでにこのアクションからシュートすることにとても長けており、非常に速いリリースによっていつでも好きなときにショットを打つことができた。

NBAの3Pラインは大学と比べて距離が少し遠くなるため、それに慣れるまでに時間がかかる選手が多い。一方、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーと同じ距離から打つことが得意な富永にとって、これは問題にはならないはずだ。

カリーといえば、富永のお気に入りの選手である。カリーの影響は富永のプレイにも表れている。ネブラスカ大は、エレベータースクリーンや、3Pを狙うためにボールを一旦パスしてから受け取るリロケーション3など、カリーの定番となっているものと似たアクションで富永を走らせる。

シーズン中に富永は、カリーがよくやることで知られる、ボールが手から離れると同時にくるっと後ろを向く『ルックアウェイ・スリー』さえも披露している。

富永啓生はセンスがいい

ネブラスカ大での富永は単なるシューターではなかった。賢いカッティングやトランジションでボールをプッシュすることでリムまで攻め入ることができた。主に、ヘジテーション・ドリブルと、15フィート(約5m)の距離から放たれる左のフローターが彼の武器だ。

富永は、自分1人でディフェンスを崩すことはそれほどできないが、バスケットの周りのタッチがよく、スペースを見つけるとそれを生かすことができる。

富永啓生が克服すべき最大の課題は身体のサイズと強度不足

富永の父親の啓之は、日本で10年プロとして活躍した身長211cmの選手だ。もし父親の長身を受け継いでいたら、彼はドラフト1巡目で指名されていたことだろう。ところが、身長6フィート2インチ(約188cm)、体重175ポンド(現地6月1日時点では180ポンド/約82kg)の彼にとって、NBAへの道は険しい。

2023年にNBAのロスターに入った539選手のうち、6フィート2インチ(約188cm)以下の選手はわずか54選手しかいない。サイズ不足はディフェンス面で問題となる。富永もペイサーズのワークアウト後にそのことを認め、「ディフェンスやフィジカルなこと。その部分はまだまだ良くならないといけない」と話している。

富永はフットワークがよく、常に選手の前に立ちはだかるために懸命に戦う。しかし、フィジカルなマッチアップには苦戦し、相手選手は守っている彼の上からショットを打つことができる。

カリーのような選手は、より強くなることでNBAのレベルにおける堅実なディフェンダーになっている。富永がNBAで通用するようになるには、もっと筋肉をつける必要があるだろう。

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富永啓生は素晴らしいインタンジブルズ(スタッツに現れない無形の要素)を持つ

ネブラスカ大で、富永はすぐにファンのお気に入りの選手となった。その理由は、彼が持つ感染力のあるエナジーにある。彼は、ビッグプレイの後でポジティブな感情を躊躇なく表現する。チームメイトは彼の成功を常に応援しており、コーチも年間を通して彼を絶賛している。

「啓生は大舞台でプレイしてきているんだ」と、ホイバーグHCはBIG10ネットワークの取材に対して話している

「彼が自信に満ち溢れ、誰に対しても引き下がらないのはそのためだと思う。彼は母国を代表して3x3(2021年東京オリンピック)に出場し、そこでベストプレイヤーになったんだ」

また、富永はスポーツマンシップにも優れており、レンジャー大学時代には、チームメイトやコーチ、対戦相手、審判の中で最も優れたスポーツマンシップを発揮した選手に与えられるチャールズ・セッシャー賞を受賞している。

ネブラスカ大のチームで最高の選手の1人になるため、富永はすでに自分のゲームにハードに取り組んでいる。彼はこれからも向上し続けなければならないだろうが、どのチームも常にシューティングを求めている。もし、彼がディフェンス面でも問題がないことを示すことができれば、来年の夏のドラフトで指名されるチャンスはあるだろう。

原文:Keisei Tominaga scouting report: What are the NBA chances for the Japanese Steph Curry?
翻訳:YOKO B Twitter:@yoko_okc

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Stephen Noh is an NBA writer for The Sporting News.
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フリーランスライター。NBAオクラホマシティ・サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。
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