フェニックス・サンズにおけるフランク・ボーゲル・ヘッドコーチという太陽は沈んだ。
5月9日(日本時間10日)、サンズがボーゲルHCを解任したことが報じられている。
2023-2024シーズンのサンズは、レギュラーシーズンの82試合に加えて4試合を戦っただけとなった。ポストシーズンの白星の数は、プレイイン・トーナメントに出場することもなかった10チームと同じだ。
球団の期待は非常に大きかった。よく言われるように、優勝するか破滅かだったのだ。2023年のポストシーズンを不本意に終えたサンズは、もっとスターの力が必要と考えた。そしてトレードでブラッドリー・ビールを獲得し、現代のNBA王者にとっては習慣である層の厚さを犠牲にした。
スターは最も大事なタイミングで輝くものだ。しかし、ビール、ケビン・デュラント、デビン・ブッカーのプレイや行動は、言葉では言い表せないことを表した。ボーゲルHCが失職に向かうということだ。
それはあまり驚きではなかった。『The Athletic』は、「(4月に)ボーゲルHCが怒りをあらわにしたことに選手たちはあきれていたと、複数の情報筋がThe Athleticに明かしている。ひとりの選手はThe Athleticに対し、笑いをこらえなければならなかったと話した」と伝えていた。
サンズは何がうまくいかなかったのか。そしてなぜ、サンズにおけるボーゲルHCの時間は終わったのか、ここでまとめる。
なぜサンズはフランク・ボーゲルHCを解任したのか?
5月9日(同10日)、ボーゲルHCは解任と報じられた。
これほど見事に計画が失敗すれば、誰かが代償を払うことになる。望まない結果をもたらすのはコートに立つ選手たちだが、その代償を払うのはコーチという場合が多い。
チームが15人の選手を取り除き、やり直すことなどできない。ヘッドコーチはひとりだけだ。ただ、何度も見てきたように、指揮官を代えても不可避なことを先送りにするだけのことも多い。解任されたとしても、必ずしもボーゲルHCの指導が失敗だったとは限らない。トップから始まる問題の可能性もある。
オーナーシップに忍耐がないこと、即座に満足したいという願望の結果かもしれないのだ。
2023年2月、サンズ買収が承認されると、マット・イシュビアは24時間も経たないうちにブルックリン・ネッツとのトレードでデュラントを獲得した。引き換えにサンズが放出したのは、ミケル・ブリッジズ、キャメロン・ジョンソン、ジェイ・クラウダー。そして最も大事なのは、将来の保護条件なしドラフト1巡目指名権4つだ。トレード資産を使い尽くしたことで、サンズは即座に勝たなければならなくなった。
イシュビアは、デュラントが昨季のサンズに欠けていたパズルの最後のピースとなることに賭けたのだ。当時のモンティ・ウィリアムズHCは、リーグ有数のスコアラーを攻撃にもっと絡めたり、手薄なロスターからより多くを引き出す方法を見つけられずに解任された。
だが、ボーゲルHCも同様に苦しんだ。デュラントがほとんどキャッチ&シュートの役割を担うになった試合もある。
さらに、ビールというボールを支配するスコアラーをもうひとり加えたことは、事態を悪化させただけだった。サンズは真のポイントガードが不在となり、優勝レベルの選手層とするチャンスを失ったのだ。サンズは「ビッグスリー」だけだった。
ボーゲルHCの守備的なスタイルは、こういった選手たちの集団を機能させるようにつくられていない。ロサンゼルス・レイカーズで優勝したにもかかわらず、うまくいかなかった時に彼はいけにえにされた。インディアナ・ペイサーズでの成功は遠い記憶のようだ。
キャップスペースに空きがなく、近い将来にトレードするためのドラフト指名権もなく、向上させるためのほかの道もない。サンズはこう着状態にあるのだ。
フランク・ボーゲルHCの戦績
ボーゲルHCはペイサーズ、オーランド・マジック、レイカーズ、サンズと、NBAで複数チームを指揮してきた。少なくともレギュラーシーズンに関しては、マジック以外のチームで成功している。
2010年代前半、ボーゲルHCが率いたペイサーズは、いつもイースタン・カンファレンスのスーパーチームには及ばなかった。だが、2019-2020シーズンにバブルでのNBAファイナルをレイカーズが制し、彼のハードワークはついに報われた。
シーズン | チーム | 戦績 | ポストシーズン戦績 | 結果 |
2010-11 | ペイサーズ | 20勝18敗 | 1勝4敗 | イースタン・カンファレンス・ファーストラウンド敗退 |
2011-12 | ペイサーズ | 42勝24敗 | 6勝5敗 | イースタン・カンファレンス・セミファイナル敗退 |
2012-13 | ペイサーズ | 49勝32敗 | 11勝8敗 | イースタン・カンファレンス・ファイナル敗退 |
2013-14 | ペイサーズ | 56勝26敗 | 10勝9敗 | イースタン・カンファレンス・ファイナル敗退 |
2014-15 | ペイサーズ | 38勝44敗 | — | プレイオフ逸失 |
2015-16 | ペイサーズ | 45勝37敗 | 3勝4敗 | イースタン・カンファレンス・ファーストラウンド敗退 |
2016-17 | マジック | 29勝53敗 | — | プレイオフ逸失 |
2017-18 | マジック | 25勝57敗 | — | プレイオフ逸失 |
2019-20 | レイカーズ | 52勝19敗 | 16勝5敗 | NBAファイナル制覇 |
2020-21 | レイカーズ | 42勝30敗 | 2勝4敗 | ウェスタン・カンファレンス・ファーストラウンド敗退 |
2021-22 | レイカーズ | 33勝49敗 | — | プレイオフ逸失 |
2023-24 | サンズ | 49勝33敗 | 0勝4敗 | ウェスタン・カンファレンス・ファーストラウンド敗退 |
フランク・ボーゲルHCとサンズの契約
ボーゲルHCは2023年6月にサンズと3100万ドル(約48億6700万円/1ドル=157円換算)の5年契約を結んだ。現在ミルウォーキー・バックスを率いるドック・リバース、ブリガムヤング大学で指導しているケビン・ヤング、フィラデルフィア・76ersのニック・ナースといった候補者たちを抑えて招へいされた。
原文:Will the Suns fire Frank Vogel? Why Phoenix coach is in hot water after first-round exit in 2024 NBA Playoffs(抄訳)
翻訳:坂東実藍