プレイオフ直前 WOWOW NBAが佐々木クリスにインタビュー

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Chris Sasaki
(提供:WOWOW)
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4月15日(現地14日)にNBAのレギュラーシーズンは終了し、プレイイン・トーナメントを経ていよいよプレイオフに突入する。それに向けて、現在両カンファレンスでは激しい順位争いが行われている。

NBAの試合を生放送・ライブ配信しているWOWOW NBAにて、バスケットボールアナリストとしておなじみの佐々木クリスがプレイオフの見どころ、楽し方について語るインタビューが行われた。

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セルティックスとオクラホマシティ・サンダーが最も現代的な戦術を駆使するチーム

──現時点ではレギュラーシーズンがまだ終了していませんが、両カンファレンスの上位陣の状況について教えてください。

クリス:ボストン・セルティックスは圧倒的で歴史的な強さです。エースのジェイソン・テイタムの他にも、ジェイレン・ブラウンがいます。これまではどちらかというと、テイタムが1番手、ブラウンが2番手という印象があったかもしれないですけど、今ではどちらが1番手なのか甲乙つけがたいぐらいブラウンが成長しています。

セルティックスは若さゆえに、ターンオーバーなどミスが出てしまうチームだったのですが、そこも改善され穴がなくなっています。クリスタプス・ポルジンギスやドリュー・ホリデーは加入1年目ですけど、周囲と以心伝心で1年目とは思えないほどフィットしています。おそらくセルティックスとオクラホマシティ・サンダーが最も現代的な戦術を駆使するチームです。

現代的というのは3ポイントを効果的に活用してドライブも積極的に仕掛ける。これはよく自転車の前輪と後輪に例えるのですが、ペイントアタックがないともちろんダメですし、3ポイントを活用することでペイント内の煩雑さを解消する。ここは共存関係があるので、どちらにブレーキがかかっても、最高のオフェンスは構築できず目的地に到達できないことを考えると、この両方がしっかり機能しているセルティックスとサンダーはすごく強いです。

──西カンファレンスは、デンバー・ナゲッツ、サンダー、ミネソタ・ティンバーウルブズが三つ巴で激しく首位争いをしています。好調の要因をお聞かせください。

クリス:ナゲッツは、現役最強選手の二コラ・ヨキッチがいます。今季はおそらくキャリア3度目のMVPを獲得すると予想します。昨季王者がファイナルに進まない画は描きにくいぐらい、このヨキッチには支配力があり、重要なゲームになればなるほどその力が発揮されます。ナゲッツは先ほど圧倒的に強いといったセルティックスに対して今季2勝していますし、本気のゲームになった時のギアの上げ方が全く違います。

──ティンバーウルブズ好調の要因はなんでしょうか。

クリス:何と言ってもリーグトップのディフェンスが好調の要因です。オフェンスでは通称“アントマン”のアンソニー・エドワーズが、いよいよ球団の顔として攻撃を牽引しています。特に彼のダンクシュートは、アベンジャーズに出てくるアイアンマンが叩き込んでいるのではないかと思わせるぐらいの跳躍力で人間離れしています。

このエドワーズとルディー・ゴベアの2人が最重要プレーヤーだと思いますが、ベテランのマイク・コンリーがその2人をうまく操っています。コンリーは古き良き時代のポイントガードで、うまく手綱を引いて最高のバランスになっています。ただディフェンスのチームなので、ヨキッチがいるナゲッツやセルティックスなどと比べると、終盤にオフェンス力が低下する課題を乗り越えることが、彼らのプレイオフでの成功を左右すると思います。

──サンダーは若い力が躍動して上位争いしています。その中で注目選手は誰でしょうか。

クリス:なんといってもチームの柱はSGA(シェイ・ギルジャス・アレクサンダー)です。彼が昨季からMVP級の領域に入ってきて、いよいよ今季は正当なMVP候補の一人になったわけです。SGAがすごいのは分かっていたけど、正直言ってサンダーが50勝するとは思いませんでした。

NBAで最も平均年齢の若いチームの一つがここまでの戦いをするとは思っていなくて、好調の理由の一つはチェット・ホルムグレンが即戦力で活躍していることです。3ポイントも打ててブロックも凄い、リーグ屈指のストレッチファイブです。とにかくサンダーは1年目、2年目の選手たちの貢献度が凄まじいです。ペイントアタックする選手と3ポイントを打つ選手が、“ウニいくら丼”みたいに最高級の状態でそろっています。SGAは4シーズン連続でリーグトップのドライブ数をマークしていますし、その周囲に優秀なシューターがいます。そんなサンダーは手に負えない状態ですね。

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Chris Sasaki
(提供:WOWOW)

レブロンとカリーが見せるパフォーマンスの生き証人となれること自体が一つの大きな喜び

──17日からプレイイン・トーナメントが始まり、21日からはプレイオフに突入します。注目している選手を教えてください。

クリス:イースタン・カンファレンスだと、フィラデルフィア・76ersのジョエル・エンビードです。出場1分あたり1点以上を超える得点力は、現代バスケでは考えられません。現1位のセルティックスにとって1番の天敵となりそうなのがエンビードです。

ミルウォーキー・バックスはデイミアン・リラードです。ヤニス・アデトクンボとコンビ結成1年目で本領発揮できるか楽しみです。そして意外とオーランド・マジックが下克上を起こすのではないかと注目しています。特にパオロ・バンケロは要チェックです。彼は現代的なオールラウンダーで、次世代のレブロン・ジェームズに近い要素を持っています。とても良いディフェンスもするマジックのリーダーであるバンケロが、彼らに少し足りないオフェンスの部分で突き抜ける何かを見せてくれるとマジックは台風の目になると思います。

──ウェスタン・カンファレンスの注目選手を教えてください。

クリス:上位チームについては先ほど話した通りですが、やっぱりロサンゼルス・レイカーズのレブロンとゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーですね。レブロンが39歳、カリーは36歳。この年齢で彼らがプレーしていることに感謝して、噛み締めています。彼らが見せるパフォーマンスの生き証人となれること自体が、僕の一つの大きな喜びになっています。

──プレイオフにおけるレイカーズのキーマンは誰でしょうか。

クリス:プレイオフではディアンジェロ・ラッセルが1番のキーマンです。オフェンスの爆発も彼がけん引しているところが多くあって、ラッセルの得点力がガクンと落ちるだけでチームの勝率も落ちると思います。そのラッセルに次いでカギを握るのが先ほどの八村選手の活躍です。

──なぜ八村選手がレイカーズの中で2番目にカギを握る選手なのでしょうか。

クリス:八村選手が先発に据えられてからの25試合は、フィールドゴール成功率が58.5%で3ポイン成功率が44.7%と本当に判断がいいですね。自分が動いたときにパスをもらって、これまではオープンだったらそこで打つか打たないかだけだったところを、最近はディフェンスの動き次第でそこからパスを流すとかそういった幅にも広がっているので、八村選手の成長はすさまじいです。

そしてディフェンスの伸びしろを誰が一番持っているか考えた時に、年齢的に厳しいがレブロン自身がディフェンスをすることが一つ目の伸びしろ。二つ目の伸びしろが八村選手だと思います。これが八村選手をラッセルに次ぐキーマンに推す理由です。八村選手は秀でたアスリートでNBAの中でも限られた選手しか持ってないような才能を持っています。オフェンス能力は折り紙付きで、どんどん成長を見せています。あとはNBAに入った時から期待されていた万能なディフェンダーに本当になれるかなれないか。八村選手にとって、進化が問われるプレーオフに大注目です。

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。
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