現地時間9月25日、英国のトッテナム・ホットスパースタジアムにて、WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者アンソニー・ジョシュア(英国)が、WBO指名挑戦者のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に12回0-3の判定負けで敗れる波乱があった。両者の再戦は確実視されるが、一方で"英国人頂上対決"の行方は定かではなくなった。
Round 1 after an epic ringwalk 🛎️ #JoshuaUsyk pic.twitter.com/kQGl4i8w2k
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ジョシュアがホームの6万人を超える満員の観客の前で無残に敗れた。スコアは惨敗といって良いものだった。112-117、112-116、113-115、全員一致でウシクの勝利だった。2019年6月にアンディ・ルイス・ジュニア(米国)にジョシュアが敗れた際、"世紀の大番狂わせ"として世界を驚かせたが、今回の敗戦は、テクニックで抑え込まれたジョシュアの不調がより鮮明になった。
1ラウンド、2ラウンドはお互い様子見で感触を確かめたが、3ラウンドからウシクが猛攻を開始。ジョシュアがぐらつく場面もあった。ジョシュアは円を描くようなフットワークで対抗し、重い右をヒットさせるがパンチに体重が乗らない場面も多く、ウシクの足を止めるまでいかない。7ラウンドにおいてもウシクの鋭いパンチを被弾する場面が増え、旗色は明らかに悪くなっていった。
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ウシクは序盤にKOを狙おうとしたものの、陣営から諭され、従来の足で稼ぐボクシングに徹したと話す。事実、ジョシュアがウシクを捉えられない。後半、ウシクは右目の上をカット、ジョシュアも右目を腫らす消耗戦に突入しても、速いフットワークを保ったのがウシクだった。最終12ラウンド最終盤、ウシクのコンビネーションに押され、ロープを背にしたジョシュアはダウン寸前まで追い込まれた。
判定は前述通り、0-3でウシクが新WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者となった。これで19戦19勝0敗で無敗記録を更新。ボクシングデータベースサイトの『CompuBox』によれば、ジョシュアは641発中123ヒット(19%)内強打は214発中71ヒット(33%)、ウシクは529発中148ヒット(28%)内強打は220発中96ヒット(44%)と、データ上でもウシクが上回った。
イベンダー・ホリフィールド(米国)とデビッド・ヘイ(英国)に続く、クルーザー級とヘビー級の2階級制覇を果たした史上3人目のボクサーとなった新王者は、試合後のインタビューで「試合は期待通りに進んだ。アンソニー(ジョシュア)のパンチは特別な感じはなかったな」「今日は最高のウシクは見せられなかった。もっとはるかに良いものを見せられるよ」と話すなど、勝者として余裕を伺わせた。試合後、ウシク、ジョシュアともに検査入院している。
ジョシュアには眼窩底骨折の疑いもあり、試合直後のインタビューに答えなかったが、代わりにメディア対応したプロモーターのマッチルーム社エディー・ハーン代表は、「厳しい戦いだった。ウシクは予想より攻撃的だった。彼は歴史に名を残したし、不満はない」とウシクを称賛。試合後、ウシクとジョシュアはバックステージで握手を交わしている。
Respect 🤝 #JoshuaUsyk pic.twitter.com/ubb7T4JTEB
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時間をおいて日付が変わってから行われた記者会見では、ウシクは「我々の次の標的はアンソニー・ジョシュア」と話し、ジョシュアも「(再戦は)110%やる」と話し、お互いに再戦を歓迎した。ハーン氏は2022年初頭に再戦に臨めることを念頭においているとも明かしていた。
🗣️ "110%" - @anthonyjoshua wants the rematch next...
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もっとも、そうなればWBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリーとの英国人頂上対決に大きな影響を与えるだろう。フューリーは10月9日に予定されるデオンテイ・ワイルダーとの第3戦を控える。ワイルダー戦の結果次第では第4戦の可能性もゼロとはいえずさらに計画がずれ込む懸念は残る。また、フューリーとジョシュアはベルトなしでも対決すると話すが、ベルトなしで行う英国人頂上対決に現実的な開催意義があるのかも不透明だ。英国人頂上対決の行方は定かではなくなってきた。