5.6東京ドームで、兄・尚弥とともに世界戦に臨む井上拓真とは|戦績・経歴

Takuma Inoue, centre, with his father Shingo and brother Naoya.
時事通信
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井上拓真は、兄・尚弥がルイス・ネリ戦でメインイベントを飾る、5月6日(月・祝)の東京ドーム大会アンダーカードにWBA世界バンタム級王者として名を連ねる。

「モンスターの弟」として兄と比較されるキャリアに悩みながらも、己のボクシング探求に突き進む井上拓真のこれまでのキャリアを解説する。

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偉大な兄の檜舞台で、WBA世界王座を死守できるか

井上拓真(18勝1敗、4KO)は、5月6日、東京ドームで指名挑戦者の石田匠を迎え、WBA世界バンタム級王者として2度目の防衛戦に臨む。このタイトル戦は、メインイベントの井上尚弥 vs ルイス・ネリとともにアマゾンプライムビデオで独占生配信される。

井上尚弥は世界4階級を制覇したパウンド・フォー・パウンドの傑人であり、現スーパーバンタム級4団体統一王者に君臨する『モンスター』だ。その「モンスターの弟」である拓真は、キャリアスタート時点から偉大な兄と常に比べられてきた。

今年2月24日、両国国技館でメインイベントを飾った拓真は、元IBF世界スーパーフライ級王者ジェルウィン・アンカハス相手の初防衛戦で、9RでのKO勝ちを収めた。判定決着が多いそのファイトスタイルは揶揄されることも多かったが、アンカハス戦ではこれまでとは違うアグレッシブなファイトによって、新しい「井上拓真像」を示した。

ただ、王者である拓真が比較される相手は今や兄だけではない。2月の両国で揃い踏みした中谷潤人もアレハンドロ・サンティアゴを圧巻の6R TKOに沈めてWBC世界バンタム級王者となったが、国際的な評価はセミの中谷に軍配が上がった。今、バンタム級戦線は、各団体ランキングに石田匠、堤聖也、比嘉大吾、西田凌佑、栗原慶太、武居由樹、那須川天心らが食い込む日本人ファイター最激戦区となっており、WBA王者の拓真もうかうかしていられないのが現実だ。

2月の防衛戦から次の試合まで3か月を切るタイムスパンはキャリア初期以来。世界戦となると異例だが、兄・尚弥がマイク・タイソン以来34年ぶりの東京ドーム・ボクシング興行で、日本人として初のメインイベンターになる大会に馳せ参じるべく、WBA指名挑戦者・石田を迎えての防衛戦を組んだ。

兄のネリ戦勝利の景気づけのためにも井上家として負けられないのはもちろんだが、数年内に各団体タイトルを日本勢が独占する可能性もあるバンタム級戦線での立ち位置を死守し、統一戦に進むためにもここで負けることはできない。

スポーティングニュースは、偉大な兄の栄光を間近で体感しながらも、自分自身のボクシングを見つけようとする井上拓真のキャリアに注目する。

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『モンスターの弟』井上拓真とは?

神奈川県座間市出身の井上拓真は、1995年12月26日に誕生。兄・尚弥とは2歳違いになる。アマチュアボクシング選手だった父・真吾氏のもとで幼少(4歳)の頃から兄弟でボクシングを始めた。高校生時代には、2月24日に同じリングに立つ田中恒成とも対戦した経験がある。

2013年、前年にプロ転向した兄を追うようにして自身も18歳でプロデビュー。名門『The Ring』誌のプロスペクト・オブ・ザ・イヤー(新人賞)を受賞するなど順風満帆のスタートを切った。

2015年にOPBF東洋太平洋スーパーフライ級王座を獲得したあと、バンタム級にステップアップ。2016年には当時のWBO世界バンタム級王者マーロン・タパレスに挑むキャリア初の世界戦をつかむも、自身のケガにより実現しなかった。デビュー以来、トントン拍子でキャリアを駆け上がる兄との比較に苦悩することになる。

2018年、9月にマーク・ジョン・ヤップを破りWBC世界バンタム級王座の指名挑戦権を獲得。同年末にタサナ・サラパット(ペッチ・CPフレッシュマート)を撃破し、暫定王座ながら、キャリア初の世界王者となった。

2019年11月には、真の世界王者になるべく、兄・尚弥 vs. ノニト・ドネアの前座で正規王者ノルディーヌ・ウバーリとの団体内統一戦に臨むも判定負け。初黒星を喫し、ゼロからの再スタートとなった。

拓真がアジア、そして日本タイトルを獲得し、バンタム級でのキャリアを立て直していく最中、兄・尚弥はバンタム級の4団体統一に成功。2023年1月に4本のベルトを返上してスーパーバンタム級に転向した。

2023年4月、拓真は兄がかつて保持し、返上したWBA世界バンタム級王座をかけた決定戦で左目上をカットしながらもリボリオ・ソリスに判定勝ち。ついに正真正銘の世界王者に上り詰めた。

現在28歳の井上拓真は、この階級を自身の力で再び統一し、兄とともに歴史に名を刻もうとしている。WBA世界バンタム級タイトルを獲得したあと、フィリピン英字紙『Inquirer』などによれば、以下のように語っていた。

「このベルトは兄がかつて持っていたもので、兄が最初に獲得した(バンタム級の)ベルトでもある。兄は4つのベルトをすべて持っていたので、今度は僕が挑戦する番だと言いたい。4団体統一王者になりたい」

アマゾンプライムビデオの特別番組の中で拓真は、兄・尚弥との差は「わからない」くらいだと表現した。バンタム級4団体統一は兄に近づくためのわかりやすい目標だ。キャリアから試合内容まで驚異的なボクサーである兄と比べられる立場ゆえに、兄の偉業を意識せざるを得ない。

だが、拓真は自分なりの答えを模索し続けている。2024年2月のジェルウィン・アンカハス相手の初防衛戦を9R KO勝ちを収めた拓真は、ようやく自身のボクシングを見出した。長谷川穂積、山中慎介ら元世界王者たちは拓真について「上手い選手」と評価する。兄のキャリアをトレースすることは拓真自身の本音ではない。それ以上に自分のボクシングの達成感を求めて、井上拓真というボクサーとしての道を切り開くつもりだ。

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井上拓真のプロ戦績と経歴

  • 出身地:神奈川県座間市
  • 生年月日:1995年12月26日(28歳)
  • 身長:164cm(5-4 1/2) 
  • リーチ:163cm(64インチ)
  • 総試合数:20
  • 戦績:19勝1敗(5KO)
  • 主な獲得タイトル:
    • 第35代OPBF東洋太平洋スーパーフライ級王座
    • WBC世界バンタム級暫定王座
    • 第49代OPBF東洋太平洋バンタム級王座
    • WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座
    • 日本スーパーバンタム級王座
    • WBA世界バンタム級王座
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Daniel Yanofsky is a combat sports editor at The Sporting News.
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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。
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