現地時間6月6日、サウジアラビア政府の資本による新リーグの『リブゴルフ・インビテーショナルシリーズ・トーナメント』開幕戦の残り6人の参加者の名前が明らかになり、賛同者であるフィル・ミケルソン(米国)がやはり出場することがわかった。それだけでなく、PGAツアーから撤退は宣言せず、メジャー出場を希望した。
6月9日、英ロンドンのセンチュリオンクラブ(7084ヤード/パー72)で開幕する同シリーズには、4日の時点で48人の参加者のうち42人が発表され、元世界1位のリー・ウエストウッド(英国)、マスターズ覇者のセルヒオ・ガルシア(スペイン)、全米プロゴルフ選手権覇者のマルティン・カイマー(ドイツ)、全米オープン覇者のグレーム・マクドウェル(北アイルランド)、マスターズ覇者のシャール・シュワーツェル(南アフリカ)らに加え、全米OPおよびマスターズ覇者であるダスティン・ジョンソン(米国)という複数の名手たちの参加が明らかになった。
6度のメジャー覇者である名手ミケルソンは、グレッグ・ノーマン(オーストラリア)がリブゴルフ・インベストメントのSEOに就任し、新リーグ構想が表沙汰になった際、PGAツアーが選手の権利を一方的に制限し搾取していると批判した。一方で、皇太子によるジャマル・カショジ記者暗殺疑惑があるサウジアラビア政府を批判しながらも、そのサウジ政府の巨額オイルマネーを資本とする新リーグ参加について前向きな発言が暴露された。"銭ゲバ""二枚舌"発言によってミケルソンは複数の大口スポンサーを失い、雲隠れするように競技から離れた。
6月4日の新リーグ開幕戦参加者リストのなかにミケルソンの名がなかったことで、新リーグとも距離を取るのかと思われたが、6日発表の残り6人のなかにその名前がしっかりとあった。4か月の潜伏期間を経たミケルソンは、自身のTwitterに長文の声明を発表した。
最初に、周囲の業界関係者やスポンサー、ファンなどに迷惑をかけたことを詫び、「自分のキャリアのなかにおいて、私の言動でいくつかで間違いを犯しました」と述べつつも、「リブゴルフに加わることにワクワクしています。メジャーでもプレイするつもりです」という驚きの言葉が並んでいた。
PGAツアーの会長ジェイ・モナハン氏は、提出された新リーグ参加申請をすべて却下し、参加を強行した場合には「制裁する」という強い意味合いを込めて警告してきた。係争を警戒してか、ジョンソンとケビン・ナ(米国)はPGAツアーを脱退して参戦する。しかし、ミケルソンは脱退は宣言せず、新リーグに参加しながらメジャー大会にも出場するつもりだというのだ。
4つのメジャー大会主催者はPGAツアーではなく、開催が近い全米オープンなどは全米ゴルフ協会となっているが、PGAツアーに組み込まれている以上、欧州ツアーのようにPGAツアーの意向に沿う可能性もある。
「私のこの決定に反対する人もいるであろうことを十分に認識し、またその強い意見を尊重します」という言葉で、この決定が反感を買うであろうことを意識している様子を伺わせたが、それ以上に新リーグ参加への期待感が強いことを同時に表明している。
「大好きなゴルフをプレイする準備はできていますが、(PGAツアーでの)32年間のあとに始まるこの新たな道は、私のキャリアの現段階においてもエキサイティングであり、自分自身だけでなく、仲間たちにとっても理想的なものです」
— Phil Mickelson (@PhilMickelson) June 6, 2022
ミケルソン自身は否定したものの、ギャンブルでの巨額損失による金欠が、1大会賞金総額2500万ドル(約32億3000万円)という新リーグ参加の理由といわれている。日本国内ツアーからは、選手会長の谷原秀人のほか、木下稜介、香妻陣一朗が参加するが、彼らが日本でツアー優勝して得る賞金よりも多い金額が、"参加するだけ"で得られる。それだけでもゴルファーにとって魅力的なリーグであることがわかるだろう。
6日発表のミケルソン以外の追加メンバーは、イティパット・ブラナタラニャット(タイ)、ビラジ・マダッパ(インド)、トラビス・スマイス(オーストラリア)、イアン・スナイマン(南アフリカ)、ケビン・ユアン(オーストラリア)だった。
しかし、多くのPGAツアーメンバーは、新リーグへの参加を拒否している。前述のサウジ政府関係者による記者殺害疑惑などの人権侵害行為、そうした黒い疑惑をオイルマネーを投入して、世界的に有名なスポーツチームを買収して傘下に置くことでクリーンなイメージで上書き、払拭しようとする『スポーツウォッシング』問題が横たわっており、この新リーグ「リブゴルフ」もその一翼であることを懸念してのことだ。
米紙『ワシントン・ポスト』のノーマンのインタビューでは、タイガー・ウッズに巨額のオファーを提示して、拒否されたことを明かしている。「9桁以上」というその金額は、帝王ジャック・ニクラウスにもあった巨額オファーとも共通しており、『BBC』などによれば、いずれも安くとも約1億ドル規模(約132億7800万円)だという。なお、欧米メディアによると、ミケルソンは約2億ドル(約265億5690万円)の契約に署名したとされる。
5月31日、ニクラウスは「興味はゼロだ。どんな大金を投げつけてこようと私には関係ない」と新リーグ参加意向がないことを明言した。
新リーグ『リブゴルフ』のプレミアシーズンは、全8戦を予定し、賞金総額は2億5500万ドル(約329億4600万円)とされる。9日から始まる開幕戦は、日本時間22:00から『リブゴルフ』公式サイトほか、YouTube公式チャンネル、Facebookでライブ中継される。