大谷翔平をトレードしないならエンゼルスはどんな補強をするべきか?

Author Photo
SHohei Ohtani Angeles
(Getty Images)

断固として、ロサンゼルス・エンゼルスは大谷翔平をトレードに出すべきだ。

この二刀流のスーパースターはMLBの2023年シーズン終了後にフリーエージェントとなる。そして大谷はエンゼルスに長い間留まるつもりはないともとれる発言をしている。野球界の視点からすると、この球団組織には欠けている部分が多すぎる。そして長期間かつ低コストの戦力を必要としている。従って、大谷とのトレード交換で若い有望選手を多く獲得することが疑いの余地なく賢明な判断だ。

▶全問正解できたら本物のファン。サッカーにまつわるクイズに挑戦しよう

しかし、現時点においてその可能性は低い。なにしろ球団GMのペリー・ミナシアン氏が大谷をトレードしないと発言したくらいだ。エンゼルスは大谷をもう1年チームに引き留める。そうなると、この地球上における最高の野球選手が最後の1年をおくるシーズンを、チームとして何の対策もないまま迎えてはならないはずだ。2023年こそプレーオフに進出するべく、あらゆる手段を尽くすべきなのだ。

しかも、地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』が報じたところでは、オーナーのアルテ・モレノ氏は球団売却を進めているという。それならば、長年この球団が逃してきたプレーオフ進出のために大金を投じてもいいはずだ。もはやぜいたく税などは気にしなくてもよいのだから。

そう、映画『メジャーリーグ』でジェイク・テイラーが口にした不滅の名言のように。

リッキー・ボーンとウィリー・メイズが引退して久しい。エンゼルスは彼らを迎え入れるわけにはいかない。ありがたいことに、このリアルな世界のオフシーズン市場には多くの選択肢が存在している。エンゼルスは2022年シーズンで73勝だった。これを2023年シーズンは95勝以上に伸ばさない限り、アメリカン・リーグのポストシーズンに参加することは難しい。そのために必要とされるものは数多い。

ミナシアンGMはこのオフシーズンですでにいくつかの補強を行なっている。マイク・トラウトに似たタイプのハンター・レンフローをトレードで獲得し、外野の枠を埋めた。レンフローは昨シーズンをミルウォーキー・ブリュワーズでプレイし、29本の本塁打を打った。その前年の2021年シーズンはボストン・レッドソックスで31本塁打だ。パワーに欠けるエンゼルス打線にとって大きなプラスになるはずだ。

さらにミナシアンGMはジオバニー・ウルシェラとも契約した。ウルシェラは内野の全ポジションを守ることができる。そして先発投手のタイラー・アンダーソンとも3年契約を結んだ。

なかなか悪くはないスタートだが、物事はまだ始まったばかりだ。するべきことはほかにもたくさんある。

エンゼルスは一塁手を獲得するべき。狙うべきは…

ジャレッド・ウォルシュは2021年には素晴らしい成績を残した。144試合に出場し、29本の本塁打を打ち、127 OPS+だったのだ。この球団で長く正一塁手の役割を担う選手のように見えた。しかし2022年のウォルシュはひどかった。ほかに表現のしようがない。118試合に出場し、出塁率は.269、81 OPS+、そしてbWAR の数値はマイナス0.7だったのだ。

そしてエンゼルスは大谷をあと1年チームに引き留める。つまりこのチームは打撃力が期待されるポジションでこうした選手に出場機会を多く与えることはできないのだ。ウォルシュを一塁に引き留め、2022年の成績が短期的な打撃不振であったと証明することを期待してもいい。または外野手にコンバートすることも可能だ。オールスター級の選手を複数のポジションで試すことはけっして悪いことではない。

なによりも一塁手は強打の持ち主であることが必須条件なのだ。

マット・カーペンターが昨シーズンにニューヨーク・ヤンキースで復活を遂げたことをエンゼルスが評価するのであれば、そして昨オフシーズンにカーペンターが取り組んだスイング改造が本物であるとすれば、その打力は他に求め難いものである。

47試合に出場し、15本の本塁打を打ち、217 OPS+の数字を残した。そして狭いヤンキー・スタジアムに特化した打者でもない。遠征地での25試合で6本の本塁打を打ち、OPS は.840だったのだ。37歳という年齢からしても、カーペンターは短期間で高額の契約を望むだろう。それはエンゼルスの球団事情からしても好都合だ。 

エンゼルスは大物遊撃手を獲得するべき。狙うべきはダンズビー・スワンソンか

デイビッド・フレッチャーには気の毒だが、2023年にプレーオフ進出を狙うチームの正遊撃手としては力不足だ。アンドリュー・ベラスケスについても同じことが言える。エンゼルスはずっと遊撃手の戦力不足という問題を抱えてきた。2019年以来、エンゼルスの遊撃手はOPSが.661であり、これはメジャー全30チーム中29位である。もちろん、ザンダー・ボガーツ、カルロス・コレア、トレイ・ターナー、ダンズビー・スワンソンのようなレベルの選手が絶対に必要だと言っているわけではない。しかし、全30チーム中29位が十分ではないことは確かだ。

上に挙げた4人は全員がフリーエージェントだ。つまり金額次第ではエンゼルスが獲得することも可能なのだ。大金になるだろうが、それだけだ。エンゼルスのファーム・システムには彼らの価値に見合う交換相手はいない。従って、大金を投ずることだけが唯一の選択肢なのだ。そして何回か前述した通り、モレノ氏は基本的には未来のオーナーが負担する費用を使っているのである。

「そうした選手たちはワールドシリーズを狙えるチームとしか契約しないのでは」と問う声もあるだろう。テキサス・レンジャーズがやったことを思い出してほしい。エンゼルスと同じアメリカン・リーグ西地区のライバルだ。昨年のオフシーズン、レンジャーズはコーリー・シーガーとマーカス・セミエンを巨額契約で獲得した。今オフシーズンではすでにジェイコブ・デグロムをやはり大金で釣り上げているのだ。

上に挙げた4人のスーパースター遊撃手たちは守備力に秀でているだけではなく、打撃力でもエンゼルスにとって大きなプラスとなる。ターナーはトップバッターに最適であるが、すでにフィラデルフィア・フィリーズへ移籍が決まった。トラウト、大谷、レインフォー、健康なアンソニー・レンドン、カーペンター、そしてこの遊撃手たちの誰かが加わったエンゼルス打線を想像してほしい。

エンゼルスは複数の救援投手を獲得するべき

エンゼルスが昨年のトレード期限でライセル・イグレシアスをアトランタ・ブレーブスにトレードしたのは大失敗だった。もはや取り返しがつかない。エンゼルスが大谷の最後となるシーズンで本当にプレーオフ進出を目指すのであれば、信頼性と実績があり、そしてチームに残ることを望むクローザーを獲得することは必須条件である。イグレシアスは昨年のオフシーズンでフリーエージェントとなり、そのうえでエンゼルスと再契約を結んだのだ。

そしてイグレシアスと交換で獲得したジェシー・チャベスは戦力にならず、短期間でチームから解雇された。もうひとりのタッカー・デイビッドソンは27歳のサウスポーであるが、メジャーリーグ通算で73回2/3を投げ、防御率は5.99だ。ブレーブスに移籍した後のイグレシアスは26回1/3で防御率0.34なのだ。比較のしようがない。

このトレードの真実は、エンゼルスは大谷が遅かれ早かれチームを去った後の準備をしていたからだと私は推測する。そう思うのは私ひとりではないだろう。そうでなければ、説明がつかない。もちろん推測に過ぎないわけだが、一旦はその方向で進んでいた計画が、大谷をトレードすることの重大性が明らかになるにつれて狂っていったと見るべきだろう。

エンゼルスがプレーオフ進出を目指すためには、実績のある救援投手が複数必要になる。それは安い金額では収まらない。エドウィン・ディアス、ロバート・スアレス、ラファエル・モンテロらが結んだ契約がそれを示している。テイラー・ロジャースとクレイグ・キンブレルは獲得可能であるが、どちらも昨シーズンは不調だった。アロルディス・チャップマンはどうだろう。アンドリュー・チェイフィンも優れたサウスポーだ。デイビッド・ロバートソンも大きな戦力になり得る。自らの市場価値を高めようとしている救援投手は多い。トミー・カーンリー、マイケル・フルマー、ザック・ブリットン、といったところだ。

エンゼルスの先発投手陣にも補強が必要。例えばマイケル・ワカのような

エンゼルスはすでに5人の信頼できる先発投手を抱えている。大谷がエースとなり、フリーエージェントで契約したタイラー・アンダーソン(昨シーズン防御率2.57)、パトリック・サンドバル(27先発登板で防御率2.91)、リード・デトマーズ(防御率3.77)、そしてホセ・スアレス(防御率3.96)だ。とくにデトマーズはオールスター級の投手になれる逸材だ。新人として登場し、5月にはノーヒット・ノーランを達成したが、6月には調子を落とした。その後に復調し、先発登板した最後の13試合では防御率3.05、FIP 2.51 だったのだ。

しかし、それでも十分ではない。野球選手に故障はつきものだからだ。実績のある先発投手を別に確保しておくべきなのだ。マイケル・ワカ、タイフアン・ウォーカー、ロス・ストリップリングのような投手のことだ。または思い切ってクリス・バシットを狙ってもいい。チーム内に競争意識を作り出すべきだ。先発ローテーションは6人でもいい。スアレスに先発と救援を行き来させるのだ。6か月にもわたる長いシーズンを乗り切るにはそれだけの厚みが先発ローテーションに不可欠である。

エンゼルスがシーズンを制するためには

これらが紙上の計画だ。するべきことは多いが、不可能ではない。必要なのはカネだけだ。

エンゼルスは本当にこれだけの投資をするだろうか。おそらく、そうはならないだろう。今いる選手たちの範囲内でことを収めようとして、大谷の最終シーズンを棒に振るのではないか。またもや「全力を尽くしましたが、及びませんでした」という凡庸な結果に終わる気がする。

やれやれ。

原文: The Angels should trade Shohei Ohtani, but they won't. So here's a blueprint for 2023 success.
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

▶プロ野球を観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう

著者
Author Photo
Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.
LATEST VIDEOS