8月29日、FIBAバスケットボールワールドカップ2023の1次ラウンド最終戦で日本はオーストラリアと対戦する。それは、日本代表メンバーの馬場雄大がオーストラリア代表のジョシュ・ギディーと2年ぶりに直接対決する試合でもある。
「彼との対戦は覚えているよ」
今年1月、オクラホマシティ・サンダーのチーム練習を終えたギディーに馬場について尋ねると、彼は笑顔で即答した。
「僕がプロとして初めてアデレード・36ersでプレイしたシーズンで、彼はメルボルン・ユナイテッドでプレイしていたんだ」
馬場とギディーはともに、2020-2021シーズンをオーストラリアのNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)でプレイしている。
馬場は、Bリーグのアルバルク東京で2連覇を達成した後、2019年夏に渡米。2019-20シーズンはNBAダラス・マーベリックス傘下のGリーグのテキサス・レジェンズでプレイしていたが、コロナウイルスの大流行によりGリーグのシーズンが中止となり、2020年7月にNBLのメルボルン・ユナイテッドと契約した。
一方のギディーは、高校時代にオーストラリアのNBAグローバルアカデミーで経験を積み、2020年3月にネクスト・スターズ・プログラムの一環でNBLのアデレード・36ersでと契約。複数のNCAAディビジョン1の大学からのオファーを断り、プロの道へ進んだ。
そして2021年1月15日、NBLの2020-21シーズン開幕戦で2人は初めて対戦した。
馬場雄大との対戦は「悪夢だった」
馬場は、今年1月の取材時に「(ギディーのチームが)僕のオーストラリアでのシーズンで初めての相手だったんですよ」と、当時のことを話している。
「レギュラーシーズンの初戦でアデレード・36ersと戦って、(ギディー)とマッチアップすることが多かったんです。僕もオーストラリアでの初めての試合だったんで、気持ちも高まってましたし、エネルギーを持ってプレイしました」
ギディーにとっても馬場のディフェンスは特に印象に残ったようで、「ディフェンスがすごくエネルギッシュだったのを覚えている」と言う。
「フルコートで僕をガードしてきて、ボールにも手を出してくるから、彼との対戦は悪夢だったよ」
粘り強いディフェンスやスピード、エナジー全開のプレイは彼の持ち味だ。そのシーズンをリーグ優勝で終えたユナイテッドで、馬場は通算31スティール、9ブロックをマークし、エースストッパーとして活躍。チーム選出の最優秀守備選手賞も受賞している。
実は、ギディーが馬場のことをこれほど覚えている理由はもうひとつある。当時、馬場とチームメイトだった選手たちから、馬場のことを聞いていたのだ。ギディーはこう続ける。
「メルボルン(ユナイテッド)の選手たちが、彼と一緒にプレイするのが大好きだったことも知っているよ。チームにとっても素晴らしい選手だったんだよね」
馬場の元チームメイトであり、この大会でギディーとともにオーストラリア代表としてプレイするジャック・ホワイトは、ギディーのこの言葉を裏付けるかのように馬場のことを称賛している。彼がギディーに馬場の話をしていた1人であることは確実だろう。
馬場は、ユナイテッドで『SHARE』賞という、シーズンを通してチームの価値観を最も良く体現した選手に贈られる賞も受賞している。これは、毎試合後に出場選手の投票で選ばれるということもあり、チームにおける馬場の存在感がうかがえる。
あれから2年が経ち、ギディーはNBAで2年目のシーズンを終え、馬場は今もNBAへの挑戦を続けている。ともにNBLでプレイしていた当時を振り返りながら、馬場は最後にこう付け加えた。
「彼も今、NBAですごく活躍していると思うので、近い将来、NBAの舞台で彼とマッチアップできたら嬉しいですね」
馬場が願ったギディーとのマッチアップは、残念ながらNBAの舞台ではない。しかし、フィンランド戦を歴史的勝利で終えて勢いに乗りたい日本と、東京オリンピック銅メダリストとして負けられないオーストラリアのグループ最終戦は、国際試合として最高の舞台になるだろう。
ギディーに「悪夢だった」といわしめた、馬場のエネルギッシュで執拗なディフェンスに注目だ。